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あすなろ140 助数詞(過去記事再掲)

2018年3月6日投稿

 

 

 

2013.06号

 

子供同士の会話を聞いていると、時に面白い発見をすることがあります。

 

例えばゲームの「レベル」の話。

 

ポケモンなどで、自分のレベルが今いくつなんて話を聞いていると、小学生の場合は、「レベル5」という言い方はしないんですよね。

「5レベ」なんですよ。

 

最初にこれを聞いたときは、言っている奴が単に間違っているだけかと思っていましたが、どうもそういう呼び方がすでに文化になっているようです。

 

ですが、こいつら何でこんな言い方するのかな~、なんて考えていたら、気づいたことがあります。

 

実は「5レベ」という呼び方は、日本語としては「レベル5」よりも、ある意味正しいのではないのか、と。

 

日本語では物を数える時、その単位を数字の後ろに付けます。

例えば、「一個、二個」「一本、二本」のように、です。

このノリで「レベル」を数えたら、「1レベル、2レベル」となりますわな。

 

小学生くらいの子供達の場合、直感的にこちらが日本語として自然であると判断しているのでしょう。

 

私の場合、大学生になってから初めてRPG(ドラクエ3・4とファイナルファンタジー3)を始めたのですが、「レベル5」の言い方でも、最初から何の違和感もなく受け入れていました。

大学生くらいになってしまうと、小学生のような「日本語に対する直感的なセンス」が、すでに失われていたのかもしれません。

 

念のため、それぞれのゲーム中で、レベルに関してどう表記されているのか確認してみました。

 

 

私が遊んでいた当時のドラクエでは、ゲーム中では「レベルが~」と出るだけで、

「レベル5」のような数字をつけた表記は無かったようです。

一方ポケモンでは、最初の「赤・緑」から「レベル5」の表記が見られます。

 

ということは、子供達は「レベル5」という文字を見ながらも、

「5レベ」という言葉を作ったことになります。

 

子供ってすごいと思いました。

 

日本語において、物を数えるときに後ろにつける「個」や「本」のことを、

助数詞(または数助詞)といいます。

「詞」という言葉がついていますが、ほとんどの文では文法的に単語扱いはされません。

「お父さん」の「さん」と同様に、接尾語(接尾辞)という扱いになっています。

 

助数詞が、ものすごく種類が多いことは皆さんもご存じの通りです。

イカは一杯、タンスは一棹(ひとさお)、畳は一畳、ウサギは一羽......

あたりまではクイズにもよく挙げられますが、

掛け軸は一幅、神様は一柱(ひとはしら)あたりになってくると、

雑学的知識力を少々試されるようになってきます。

 

さらに、幟(のぼり)は一流れ(ひとながれ)とか、真空管は一球(いっきゅう)とか、

海苔は一帖で10枚、半紙は一帖で20枚、美濃紙は一帖で48枚とか言われても、

もう知るかって感じです。

 

日本語の助数詞は300とも500とも言われていまして、現在も増え続けています。

コンピュータで使われる「1バイト」は、最近になって登場した助数詞の一例ですね。

 

助数詞という概念は、日本以外でも東アジア各国などにあります。

しかし、英語圏ではあまり一般的ではないようです。

2本の鉛筆なら「two pencils」で、直訳すると「2鉛筆」というような言い方です。

 

日本語の序数詞に近い表現としては、一応「a cup of tea(お茶1カップ)」

「a piece of paper(紙1切れ)」という言い方もありますが、使用範囲は限定的です。

 

ところで、先に挙げた「2鉛筆」では「数字+名称」の順ですが、

「レベル5(level 5)」では「名称+数字」という順序となっています。

これは何かというと、「個数」と「順序」の違いから来ています。

英語で「5レベル(five levels)」と言ってしまうと、

「レベルが5個」という意味になってしまうので、それと区別する為なのでしょう。

 

なお、「5番目のレベル」だったら、第5番目を表すfifthを使って

「fifth level」としても良さそうな気がしたのですが、これもよく考えたらダメですね。

というのも、英語で第一、第二、第三......と序数が進む時は、

大抵が上から下に進むイメージなのです。

ですから、第一レベル(first level)よりも第二レベル(second level)の方が、

価値が低い物に見えてしまいます。

これでは、「レベルアップ」にはなりません。

 

レベルの他にも「パート1」「クラス4」「バージョン3」「セクション2」など、

日本語化している「英語式助数詞」はあります。

もっと昔から使っている日本語でも、「問1」「図3」などの言い方がありますが、

これも元々は「Question 1」「Figure 3」を直訳しただけではないかと思われます。

 

このような、日本語と英語の語順を違いを考えていると、

別のジャンルでも同じような例を見つけました。

それは、「敬称」です。

 

日本語では「様」「ちゃん」から身分を表す「卿」「閣下」「校長」「中佐」まで、

全て名前の後に付ける接尾語として用いられますが、

英語ではミスター、ドクター、サー、ロードなど、

全てが接頭語として、名前の前に付けられます。

「マッカーサー元帥」は「General MacArthur」ですし、

チャールズ皇太子殿下なら「His Royal Highness,The Prince Charles」となります。

敬称の付け方は、フランス語やドイツ語などでも同様です。

 

このあたりは、例えばコロラド州を「state of Colorado」と呼んだり、

ペンシルベニア大学を「University of Pennsylvania」と呼ぶような、

「種別オブ地名」の語順に通じる物があります。

いずれも、修飾語を被修飾語の後に付け加えるという「英語式」の修飾方法で、

日本語には無い語順です。

 

以上の語順の違いは、述語と目的語が日本語と英語で逆転しているから?

とも思いましたが、漢語では述語+目的語の語順が「英語式」なのに、

修飾・被修飾の語順は「日本式」です。

非常に興味深いところですね。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義