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あすなろ145 蛇の文化史(過去記事)

2018年3月14日投稿

 

 

 

2013.11号

 

郵便局が年賀状の予約を始めたようで、私の所にも卒業生(郵便局員)が営業に来ました。

もうそんな季節なんですね。

 

そういえば、今年は巳年だったはずですが、こういうものは年末年始を過ぎると忘れきってしまうものですねと実感しています。

 

聖獣とか神獣とかいう言葉があります。

ヒンドゥー教におけるウシなんかは有名ですよね。

そこまでじゃなくても、十二支の動物も、ある意味聖獣なのだろうと思います。

 

そしてその中でもヘビは、民族を問わず「聖なる動物」として扱われることが多いようです。

 

人類は歴史的に、自身の力の及ばない生物に畏怖し、信仰の対象としてきました。

 

例えば、ライオンはエジプトでは神獣スフィンクスのモデルとなっています。

日本にも獅子として伝わって、正月に獅子舞をやったり、神社の門前で狛犬になってみたり、お寺で文殊菩薩を乗っけたりしています。

 

ゾウは古代インドでは世界を背中に乗せてみたり、ヒンドゥー教のインドラ神を乗せたりしています。

日本では普賢菩薩を乗せています。

また、擬人化したらヒンドゥー教ではガネーシャ神ですし、それが日本まで来ると歓喜天(かんぎてん)となります。

 

同じように、クマも世界各地で信仰の対象となっています。

ただトラは、四獣(四神)の白虎以外では、ワルモノ扱いされることのほうが多いようです。

日本でも、ヌエになって京の街に現れたこともありますし。

 

そして、ヘビも同じように、世界各地で信仰の対象となっています。

 

日本では、神の使いとしての白蛇が有名です。

また昔話では、ヘビが人間の男または女となって、人間と契りを交わす話が多々あります。

人間と契って子を産む動物の話は、ヘビ以外にはあまり聞きませんので、やはり少し特別な動物と考えられていたのかなあ、なんて解釈をしています。

 

中華圏で皇帝の象徴とされる竜も、ヘビをモチーフにしていることは自明でしょう。

先に挙げた四獣の一つである玄武は、ヘビがからみついたカメの姿をしています。

 

諸外国でも、ヘビは神獣として扱われています。

アステカのケツァルコアトルという、羽毛の生えたヘビは有名ですよね。

エジプトのファラオ像の頭にもヘビはくっついています。

インド神話にも、ナーガという名前の蛇神がたびたび出てくるみたいです。

 

と、いろいろあるわけですが、今回私が「ヘビが象徴するもの」として真っ先に思い出したのは、こんなものでした。

 

 

これ、第二次世界大戦中のドイツ軍の階級章(肩章)なのですが、通常の階級章にヘビのモチーフが追加されています。

実はこのヘビは、軍医であることを表しています。

 

本当はヘビの入った部隊マークもあったのですが、インターネットを英語でひっくり返しても、私の実力では見つけられませんでした。

(実家に帰れば資料があるんだけどなあ)

 

そして、このヘビの元ネタはこれです。

 

 

アスクレピオスとは、ギリシャ神話に登場する凄腕の名医です。

あまりに凄腕すぎて、ついには死者まで生き返らせてしまうようになったので、生死の秩序を乱すとしてゼウスに殺され、医学の神となったのだそうです。

そんな話から、今でも西欧諸国では、医療のシンボルとして、ヘビ付きの杖が使われています。

 

 

スターオブライフは、最近では日本でも、病院所有の救急車では見かけることが増えました。

日本医師会も、最近になってヘビのマークを使い始めたようです。

 

ところで、アスクレピオスにはヒュギエイアという娘がいて、父同様にヘビを連れています。

この娘が、アスクレピオスの脇で薬の入った壷や杯を携えていることから、今度は薬学のシンボルとして、ヘビを伴った杯が使われることがあるようです。

 

 

またこれとは別に、ヘルメスの杖というものがあります。

2匹のヘビがからみついていて、さらに翼があるのが特徴です。

 

 

ヘルメスは商売と旅の神なので、こちらはよく商業の象徴として使われています。

日本でも一橋大学や、日本各地の商業高校の校章として採用されています。

ですが、同じヘビ付きの杖ということで、どうもこれとアスクレピオスの杖を混同して使われているような例があります。

そんな恥ずかしい例が、なんと米軍にあります。

 

 

やっちまったか米軍!

……と思ったのですが、同時にこういうマークもあるんですよね。

共に米陸軍なのですが。

 

 

結局、わかっているのかわかっていないのか、よくわかりません。

 

ところでヘルメスは、商売の天才であると同時に、泥棒と嘘の天才でもあります。

つまり、「商売人ならば、嘘つきで泥棒であれ」……ってことですよねコレ。

西洋人が、商売に対してどういう考えを持っているのか、とてもよく分かる好例でした。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義