雑記帳(あすなろ)

HOME雑記帳(あすなろ)あすなろ155 石鹸(過去記事)

あすなろ155 石鹸(過去記事)

2018年3月21日投稿

 

 

 

2014.09号

 

牛乳石鹸という名前をご存じでしょうか。

 

その名も牛乳石鹸共進社という会社の作っている石鹸でして、明治42年から続く商品ブランド「牛乳石鹸」を社名にしています。

 

商品名と会社名が同じという例は、昭和初期のころまでは数多くありました。

しかし高度成長期からバブルにかけて、大手各社では経営を多角化したために、漢字の社名を片仮名のブランド名に変更したり、アルファベットを社名に入れることが流行しました。

その結果、その後は一商品や一業界のみを表す社名が減っています。

 

例えば、鈴木自動車は株式会社スズキという名前になったことによって、不動産をしたり物置を作ったりしても「自動車会社なのに物置かよ」というつっこみを入れられないようにしています。

出版一本から始まった福武書店は、教育関連がすっかり拡大したので、ベネッセという「かっちょええ名前」になりました。

かつての石川島播磨重工は、今やアルファベット三文字のIHIが正式名称となっています。

 

もちろん、昔ながらの社名を守っている会社もあります。

味の素株式会社は、商品名=社名の代表例ですね。

他にも、浅田飴とか、仁丹とか、ブルドッソース、セメダインなどが、明治や大正から続く商品名を、現在もそのまま社名としています。

今では作っていない商品名(シャープペンシル)を社名とし続けているシャープという会社もあります。

 

それはともかく、私は入浴時には、そんな牛乳石鹸を愛用しております。

もちろん、わが家にも液体のボディーソープはあります。

それでもあえて石鹸を使っている理由は、泡立ちが違うから、です。

 

あ、いやちょっと訂正。

牛乳石鹸が特に泡立ちがいい、というわけではなくて、石鹸が一般的に、という意味です。

風呂で使う限りでは、泡立ちや使用後のすっきり感は、どうも固形石鹸の方が液体石鹸に勝る気がします。

 

ただ、手洗いのような少量使用時には、違いは気になりません。

むしろ、使い勝手の面から、液体石鹸の方がいいと思っています。

 

てなことを考えていくと、

「じゃあ固形石鹸を溶かしてボトルに入れておけば最強じゃん」

ということも思いつくかもしれませんが、そうなるとは限らないんですよね。

実はほんのちょっとだけ、成分が違うのです。

 


自由研究のネタってのは、本当はこうやって探すものですよー。

来年あたり、誰か固形石鹸を溶かしてボトルに入れて、使いこごちを比べるなんて実験はいかが?

または、液体石鹸を乾かしたら固形石鹸になるかどうか、なんてのとか。


 

その違いは自分で調べてもらうとして、その前に、まずは石鹸とはどういうものか、石鹸を使うとなぜ手がきれいになるのか、そもそもなぜ手の汚れは水だけでは落ちないのか、という話をします。

 

例えば、外で草むしりをして、手に土が付きます。

そのまま水洗いをするだけでも、時間をかけてがんばれば汚れは落ちますが、石鹸を使った方が早く落ちます。

なんででしょう? という話。

 

皮膚には毛穴があって、そこから毛が生えています。

穴ですから、放置しておくと病原菌の入り口となってしまいますので、それを防ぐために中から皮脂という油を出して保護しています。

この油は、毛穴の保護の他に毛髪表面の保護や、皮膚そのものの保護の役割もあります。

 

というわけで、人間の皮膚は、通常は油分で覆われています。

ここに例えば土が付くと、皮膚の上は油に溶けた土がくっついているという状態になります。

これを落とすためには、油を流し落とさなければいけません。

しかし、水に油は溶けません。

これが、水だけでは汚れが落ちにくい理由です。

 

一方、石鹸には、「油と水を混ぜる」作用があります。

 

石鹸の分子は細長い形をしているのですが、一方が「水に溶ける部分(親水基)」で、もう一方が「油に溶ける部分(疎水基)」となっているために、水と油を「つなぐ」ことができます。

その性質から、石鹸分子は油を取り囲んで、油を水中に「溶かし出す」ことができるのです。

 

なお、石鹸分子が油を囲んだ状態をミセルといいます。

 

 

石鹸のような性質を持った物質を、「界面活性剤」といいます。

なお、肝臓で作られる胆汁も同じ性質を持っていて、消化管内の脂肪を他の物質と混ぜる働きをしています。

 

このような石鹸分子は、脂肪酸(脂肪を消化したときにできるアレ)にちょっと手を加える(鹼化)だけでできあがります。

実は、石鹸は油から作っているのです。

 

さて。

今時は手洗い石鹸といえば、公衆の場所でも大抵が液体石鹸ですが、昔はよく固形の石鹸がそのまま置いてあったりしたものでした。

(「シャボネット」は例外として)

 

そして大抵、長い間放置された石鹸は、表面には同じ方向に何本ものヒビが走っていて、しかもカチカチに固くなっていて、泡が立たないんですよねこれがまた。

でもこの現象にも、ちゃんと理由がありました。

 

まず、同じ方向にヒビが入るのは、工程上の問題でした。

機械練りという方法で石鹸を製造するとき、棒状に押し出すために、結晶の向きが揃ってしまうからだそうです。

枠練りという方法で作られた石鹸では、これは起こらないとのことです。

 

また、石鹸は様々な温度に対応できるように、低温から水に溶けやすい柔らかい成分と、高温で洗浄力を発揮する硬い成分が混ぜてあるのだそうです。

ところが、湿度の多い所に放置しておくと、水に溶けやすい成分だけが流れ出てしまって、硬い成分だけ残った石鹸になってしまうのだそうです。

 

ということは、硬くなってしまった石鹸は、お湯で使えばよかったのですね。

30年前の自分に教えてあげたいです。

 

また当時は、屋外の水道に、ネットに入れた石鹸をかけておくと、よく無くなったものです。

昔の学校の先生とかは、誰が盗っていくのか結構悩んだらしいのですが、この犯人は、今ではカラスだとわかっています。

カラスが石鹸を食っちゃうんですね。

先に述べたとおり、石鹸というものは脂肪をちょっといじっただけのものですから。

 

最後は、最近の若者には縁の無い話でした。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義