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あすなろ65 納豆の効能(過去記事)

2018年3月30日投稿

 

 

 

2007.03号

 

申し訳ありませんが、今回は時事ネタから引っ張ってきました。

テレビの話より。

 

つい先日、「あるある捏造発覚」が大々的に報道されましたね。

 

あの番組は、数年前に意味不明のアミノ酸ブームを起こした張本人でもあります。

アミノ酸の「効果」とやらがいかにいい加減で、この番組がいかに適当に作られているかは、実は私もこのあすなろ通信(2003/7・No.21)において、一度取り上げたことがありますので、今回の騒動は今更の感もあります。

 

今回の騒動、きっかけは納豆でした。

 

納豆がダイエットに効くそうな

 

→納豆を毎日食べよう!

 

→ダイエットは実はうっそピョ~ン

 

→納豆を毎日食べたのは馬鹿でした…

 

……というような流れが世間一般にあったようで、これ以後、ちょっと納豆の人気が低下しているような気がしています。

しかし、一茨城県民として、この状態は看過できません。

納豆の名誉を復活させるべく、納豆のすばらしさを説いてみようと思います。

 

といっても、納豆の味や調理法などは、すでに一般に知れ渡っているでしょう。

ここで「納豆に砂糖を入れるとおいしいよ」と説いたところで、「ダイエット」という言葉に煽動された愚民共の流れは、そうそう変わらないでしょう。

ここは「食の怪人」小泉武夫氏の著作に従って、科学的見地から見た、納豆の効能を挙げていこうと思います。

(参考文献…NHK人間講座「発酵は力なり」)

 

・効能その一 消化がいい

 

納豆とは、煮た大豆にとりついた納豆菌が、大豆の蛋白質(たんぱくしつ)を分解(発酵)している、まさにその最中の状態の食品です。

蛋白質は、人間が摂取する際には、まずアミノ酸に分解されてから吸収します。

しかし納豆は、納豆菌によってあらかじめアミノ酸まで分解が進められているのです。

 

それに加えて、納豆には納豆菌が作った澱粉(でんぷん)分解酵素、蛋白質分解酵素、脂肪分解酵素が、たくさん残されています。

これらは人間の消化酵素と基本的に同じですから、栄養分の吸収が、とても助けられることになります。

 

・効能その二 蛋白質

 

大豆が「畑の牛肉」と呼ばれる、と聞いたことがありませんか?

「~と呼ばれる」という言い回しは、「誰も呼ばねえよ」というものが多いのですが、これに関しては本当です。

 

煮た大豆に含まれる蛋白質の量は、平均で全体の17.5~18.5%あります。

それに対して、牛肉の蛋白質は、18~19.5%です。

本当に、牛肉とほぼ同じ割合の蛋白質を含んでいるのです。

しかも先述したとおり、これが消化しやすい状態で摂れるのです。

蛋白質の摂取には、もしかしたら牛肉よりも納豆の方が適しているのかもしれません。

筋肉を付けるのに、市販のプロテインよりも、きな粉(つまり、大豆の粉末)の方が安くて効果が高い、という話を聞いたこともあります。

 

・効能その三 ミネラル

 

大豆には亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、カリウムといった成分が豊富に入っています。

そして大豆が納豆になることによって、これらがより吸収しやすい状態になっています。

ミネラルの中でも、例えば亜鉛が不足すると、味覚障害、情緒不安、遺伝子形成の阻害などの症状が現れるといわれています。

納豆には、それらを防ぐ効果があるというわけなのです。

 

・効能その四 ビタミン

 

納豆は、ビタミン群も豊富です。

中でも、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE、ナイアシンなどが多く含まれています。

特にビタミンB2が豊富で、煮ただけの大豆の5~10倍あります。

ビタミンB2の不足は、皮膚炎、脱毛、食欲不振、疲労、成長障害の原因となります。

 

また、ビタミンKも増えます。

ビタミンKは、腸内の大腸菌が作りだすビタミンで、骨とカルシウムを結合させるのに働きます。

私の手元の資料では、納豆自体にビタミンKが入っているのか、大腸菌の働きを活発にするのかがよくわかりませんが、とにかくそういう効果があるそうです。

これにより、骨粗鬆症を防ぐ効果があります。

 

・効能その五 保健的機能

 

よく、ヨーグルトの宣伝文句に「乳酸菌を生きたまま腸内に」というものがありますが、これはなんのためなのかご存じでしょうか。

 

乳酸菌や納豆菌などの菌は、善玉菌と呼ばれることがあります。

これに対して悪玉菌と呼ばれるのが、食べ物を腐らせる腐敗菌を始めとして、病気の原因となる炭疽菌、結核菌などのことです。

 

善玉菌は、悪玉菌の繁殖を阻害することができます。

 

寒天培地に病原性大腸菌のO-157を入れ、そこに納豆菌を同じ数だけ入れて混合培養してみます。

すると、ほとんどの場合で培地は納豆菌に支配され、O-157は増殖できなくなります。

基本的に、細菌などの微生物は異種同士での共存はしません。

同種同士で集団(コロニー)を作り上げ、さらには特殊な物質を出して、異種の増殖を抑えようとします。

 

おもしろいことに、腐敗菌などの悪玉菌と善玉菌を勝負させると、おおかたの実験では善玉菌の方がはるかに強いのです。

だから、善玉菌がいる食品は腐りにくく、食べても病気になりにくいのです。

うまくいけば、繁殖を始めた病原菌を追放することもできます。

 

そして納豆を食べると、納豆菌を生きたまま腸内に入れることができます。

途中、胃を通過する必要があるのですが、納豆の場合は大豆の粒の中に入っていれば、胃酸に侵されずに腸にたどり着くことができます。

また、納豆菌は比較的熱に強いですから、熱を使って調理した納豆でもかまいません。

善玉菌の摂取法に、融通が利くのが納豆なのです。

 

そうやって、腸内に納豆菌を棲み着かせておけば、腸の中で悪い雑菌の繁殖を防げます。

毒素を吐くような悪い菌がいませんから、便秘にも下痢にもなりません。

今回の参考文献の著者である小泉氏は、海外出張する際には乾燥納豆を大量に持って行くのだそうです。

そしてそれを毎日食べていれば、何を食べても食中毒に全くかからないとのことです。

納豆菌で満たされている腸内には、悪玉菌が取り付く隙が無くなってしまう、ということなのです。

 

また最近、納豆に含まれるすばらしい酵素が、新たに二つ発見されました。

 

一つは、アンギオテンシン変換阻害酵素というもの。

これは、高すぎる血圧を下げて、平常にする効果があります。

もう一つは、ナットウキナーゼという、血栓を溶解する酵素です。

これによって、癌よりも恐ろしい、脳梗塞や心臓疾患を防ぐことができます。

実にすばらしいではないですか。

 

本当はまだあるのですが、紙面が尽きてしまいました。

納豆を毎日食べて、健康な毎日を過ごしましょう。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義