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あすなろ39 日本語・茨城弁の発音(過去記事)

2018年4月7日投稿

 

 

 

2005.01号

 

子供に字の読み方を教えていると、時におもしろい発見があります。

 

外国の言葉って、日本語に比べて発音と表記にギャップを感じることがありますよね。

個人的には、まず思いつくのがフランス語。

自動車メーカーの「ルノー」は、フランス語で表記するとRenaultです。

読むと短いのに、書くと長いですよね。

確か、フランス語の単語は、最後の「t」や最初の「h」を読まないと聞いたことがあります。

日本人から見ると、なんだか効率が悪いような気がしませんか?

 

でも実は、日本語にも「読まない言葉」があったのです。

 

小さい子供に「カップ」をどう読ませますか?
 
「か・ぷ」
 
ですよね。

「っ」は、読んでいないことになります。

 

というと、

「カップとカプは違う」

と云われちゃいそうですが、英語では、カップ(cup)の正しい発音は
 
「カp」
 
です。
 
どうやら「っ」は、日本人が便宜上入れただけのようです。
 
そういえば、和語においては「ぱ行」の前は、原則として「っ」が入るような気がします。

こういうことから考えを発展させていくと、日本語における「っ」の法則なんてものが見つかるかもしれません。

 

もうちょっと、「表記と発音のギャップ」について書きましょうか。

 

英語では、文字で書くと

「How do you do?」

となるものも、実際には

「How dyudo?」

と発音しているようなものいくつかあります。

これと同じような例が、日本語にもあることに気がついてきました。

 

例えば、「明日」という言葉があります。
 
ひらがなで書くと

「あした」

です。

 

これを読むとき、ゆっくりと発音すると、たしかに

「a・shi・ta」

と発音しています。

 

しかし、実際の話し言葉では、このとおりには発音していません。

試しに、普通に話す速さで、普通に話すように口に出してみてください。

恐らく、

 

「ashta」

 

となり、真ん中の「し」は、ちゃんと発音されていないはずです。

つまり、母音のない子音だけの状態です。

 

この状態を、ここでは「あシた」と表記することにしましょう。
 
同様のものは、他にも見つかります。

茨城県立下妻一高は、こうやって発音しているはずです。

(かたかなは声を出さないで)

 

「イばらキけんりツ シもつまいチこう」

 

気がついた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「音便(おんびん)」です。
 
中学校で習う音便は、促音便(っ)、撥音便(ん)、イ音便、ウ音便の四つくらいだったような覚えがあります。

しかし日本語には、こういう「表記されない音便」もあるってことでしょう。

 

日本語の発音と云えば、これよりもよく出てくる話題が「鼻濁音(びだくおん)」です。

文節の中で、先頭にあるガ行と途中にあるガ行では、発音法が異なるというものです。

これ、ちゃんと発音できますか?

 

「トンガ」と発音してみましょう。

 
一音ずつ区切って発音した時の「ガ」と、普通にしゃべるように発音したときの「ガ」は、発音方法が違います。

わかりますでしょうか。
 
わからなければ、スピードいろいろ変えて声に出してみてください。

単音の「ガ」とは、違った声の出し方をしているはずです。

 

これが、鼻濁音です。

 

ガ行の音は、文節の先頭にある場合以外は、鼻濁音で発音するのが美しい日本語だと云われています。

(「うどう」は単音のゴだが、「けつう」は鼻濁音のゴ)

 

ぜひ、練習してみてください。

 

次は、アクセントの話です。

 

私は、愛知県出身です。

子供の頃から使っていた言葉は「三河弁(厳密には東三河弁)」です。

東京弁とは、どうしても多少のずれがあります。
(勘違いされている方もいらっしゃるかもしれませんが、東京弁や関東弁は標準語ではありません。)
 

すると、子供に本を読んであげているときに、アクセントについて迷うことがあります。

ウチのカミサン(神奈川→茨城)は私よりも東京弁が達者ですので、確認し合うことがありますが、それでも気がつきにくいものがあります。

 

例えば「紙」。

 

      ・
関東では「かみ」と、「み」にアクセントがあります。
 
       ・
三河弁でも「かみ」です。

 

これだけ見ると同じみたいですが、この先に助詞をつけると、違いが生じる場合があるのです。

見てください。

 

 ・ ・
かみをおる。(東京弁)

 

 ・・・
かみをおる。(三河弁)

 

故金田一京助氏の方法(下表参照)で分類すると、東京弁の「かみ」は「アクセント2」で、三河弁の「かみ」は「アクセント0」となります。

 

しかし今回は、単なるアクセントではなく、「音の高さ」で考えたいと思います。
 

例えば、「しもつまし」は、金田一式でいくと「4」にあたるのですが、厳密には三音階を使っているはずです。

低い方から音の高さを1.2.……と名づけることにすると、「しもつまし」は「23331」となるのではないかと思います。

 

なぜ音階にしたかというと、茨城弁を表現しようとすると、三音階では済まないからです。
 

例えば、茨城弁で「あさくらくん、」と呼びかけるときには、「123451」となり、五音階使っていることがわかります。

私には、ここまで音階の豊かな地方は、他には思い付きません。

 

茨城弁と云えば、よく「アクセントがなく、平坦な発音」と揶揄されます。

しかし、音階は豊かなのです。

茨城弁を使える人は、このことを誇りに思ってください。

 

方言とは、その土地に生まれ育った人だけが使える、特権的な言葉です。
 

確かに、他の土地から来た人が、その土地の言葉に「染まる」ことはあります。

しかし純粋な方言は、恐らく一生マスターできないでしょう。
そういうものなのです。

また、一度手放すと、そう簡単には取り戻すことができません。

それが方言です。

 

せっかく話せる言葉なのですから、大事にして下さい。

お願いします。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉

 
 

参考文献

明解国語辞典 改訂版(昭和二十七年)