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あすなろ119 エアコン(過去記事)

2018年7月8日投稿

 

 

 

2011.09号

 

7~8年前のこと、大学時代の同級生が、子供を連れて私の家に遊びに来ました。

 

確かあれは、夏の日のことでした。

我が家に入って最初に、友達の娘(5歳くらい)が

 

「えあこんをつけてください」

 

と言ったので、

 

「えあこんはありません。ごめんね」

 

と答えたところ、固まってしまいました。

 

あれは本当に、見事な「二の句が継げない」状態でした。

とても面白かったです。

 

そんなわけで、相変わらずエアコン無しの家に住んでいる朝倉ですが、塾ではガンガン使っています。

塾は自宅と違って「都会」ですので、窓を開けると排気ガスのにおいが入ってきますからね。

 

ウチと違って都会暮らしの皆様のことですから、今年の夏もエアコン様にお世話になったことでしょう。

 

エアコンは、中学社会の歴史では「3C」の1つ「クーラー」であると習うはずですが、クーラーとエアコンは、厳密にはちょっと違います。

冷房機能しかついていないのがクーラーで、冷暖房がついているのがエアコンです。

ただし、エアコンの暖房機能は、冷房機能を「逆」に使っているだけですので、根本的な理論は変わりません。

また、冷蔵庫も基本的な原理は同じです。

 

その理屈は、中学校の理科+αのレベルで理解できるものです。

そんな話をしましょう。

 

ただし、その原理を理解する為に、必要な知識がいくつかありますので、予習しておきましょう。

 


基礎知識その1。

 

ものの温度は、そのものが持つ熱の量で決まります。

熱をたくさん持っていると温度が上がり、熱の量が減ると温度が下がります。

……こう書くと当たり前のことのようですが、ポイントは、冷たいものにも熱は含まれているという点です。

冷たいものは、持っている熱が少ないだけで、熱がない、というわけではないのです。

 

基礎知識その2

 

気体を圧縮すると、温度が上がります。

逆に、気体を膨張させると、温度は下がります。

しかしそのとき、例えば1リットルの空気を圧縮して温度を上げても、それをまた元の1リットルの大きさに戻すと、理論上は元の温度に戻ります。

(エネルギー保存の法則です)

 

基礎知識その3

 

気体と液体では、同じ温度でも、持っている熱の量が全く違います。

気体の方が液体よりも多くの熱を持っていますので、液体を気体にする為には、多くの熱が必要となります。

逆に、気体を液体にすると、熱が余ります。

余った熱は、周りに放出されます。

 

基礎知識その4

 

気体を圧縮していくと、最後は液体になります。

逆に、液体を無理矢理膨張させると、気体になってしまいます。


 

以上4つの知識を得たところで、冷たくする理屈の説明を始めます。

 

まずここに、冷媒と呼ばれる気体があります。

これにぎゅうっと圧力をかけて、液体にしてみましょう。

すると、余った熱が出てきて、熱い液体が出来ます。

 

この熱い液体から圧力を抜いただけでは、また最初と同じ温度の気体になります。

持っている熱の量が、最初と同じだからです。

 

しかし、この熱い液体に外から風を当てて、冷ましてしまいます。

すると、持っていた熱が風に持って行かれて、熱の量が最初よりも少なくなってしまいます。

 

そうやって冷ました液体を、今度は無理矢理膨張させて、気体にします。

すると今度は、さっき熱を奪われた分だけ熱が足りなくなるので、最初に比べて熱の不足した状態になります。

つまり、温度の低い気体となります。

 

これに暖かい風を当てると、こんどは当たった風の熱が奪われて、風が冷たくなります。

もちろん、温度の下がった気体(冷媒)は、風から奪った熱で温度が上がります。

 

ここで、以上の流れを、冷媒の動きから、


1. 気体の冷媒に圧力をかけて液体にする

2. 熱くなった液体の冷媒に風を当てて熱を放出する(冷ます)

3. 液体の冷媒を膨張させて気体にする

4. 気体の冷媒に風を当てて熱を取り込み、温度を上げる(周りを冷やす)


 

と、4つの行程に分類しましょう。

 

エアコンの場合、1. の気体を圧縮する場所は、室外機の中にあります。

室外機というのはですね、エアコンが動くと、家の外でうおーんってプロペラが回っている所がありますよね。

それです。

それの中に、気体を圧縮するコンプレッサが入っていて、気体を液体に変えます。

 

そして、そのうおーんのプロペラで、2. の行程をします。

つまり外のプロペラは、圧縮して熱くなった液体を冷ましていたのです。

 

冷めた液体は、パイプを通って室内の送風機(エアコン本体)へと流れてきます。

そしてその本体の中で、3. の膨張を行います。

具体的には、その冷めた液体をブーっと吹き付けて、霧の状態にしながら広げるみたいですね。

もちろんこれは、機械の中での話です。

 

そうすると膨張させられた気体はすんごく冷えていますので、それに室内の風を当てると冷たい空気が出る、というわけです。

これが4. です。

 

このあと、気体となった冷媒は、パイプを通って室外機に行って、また圧縮されることになります。

 

ここで念のために書くと、室内外を移動しているのは液体や気体になった冷媒だけであって、空気は移動していません。

 

熱の移動という点から見ると、4. で室内の熱を取り込んだ冷媒は、室外機の2. で、外の空気に熱を奪われていきます。

つまり、室内の熱を屋外に運び出しているのが、冷房の仕組みなのです。

 

エアコンを暖房に切り替えた時には、これと逆の流れを作ります。

 

つまり、室外機のプロペラで4. をおこない、室内の本体の送風で2. をおこないます。

こうすることで今度は、屋外から集めた熱を、室内に取り込むことができます。

寒い冬の屋外から熱を集めるとは変な気がしますが、基礎知識その1、冷たいものにも熱は含まれています。

外は寒くても、熱が入っているのです。

 

エアコンの暖房は結局、熱を運搬しているだけですので、電力を直接熱に変えているわけではありません。

ですから、電気のファンヒーターよりも、電力効率は良くなります。

 

ところで先にも書きましたが、冷蔵庫も、エアコンと同じ仕組みで冷やしています。

ですから冷蔵庫を開けておいても、室内は全く涼しくなりません。

 

さて何故でしょう?

説明できますか?

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義