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あすなろ98 ダストトレイル(過去記事)

2018年4月6日投稿

 

 

 

2009.12号

 

ここ最近、マスコミニュースで、天文ネタが取り上げられることが多くなった気がします。

テレビの天気予報がバラエティー化して、各局で視聴率を競うようになってから、天気予報のついでにそんなことを言うようになったのかなあなんて思っていますけど、テレビを見ない私はよくわかりません。

ただ、比較的星好きな私としては、まあ悪い気はしていません。

 

今年になってからは、7月の皆既日食に加えて、流星群が2回ほど話題にあがったみたいです。

2年前には、水星の太陽面通過(太陽の手前を水星が通過)なんていう、普通の人は言葉すら知らんだろというような話題を、カミサンはラジオで聞いたらしいですね。

 

 

どうやら、私が高校で天文気象部の部長をやっていた頃より、マスコミに乗る情報の量が、確実にあがっているようです。

 

ただその一方で、現在無人で宇宙空間を航行中小惑星探査機はやぶさが、

「故障して停止していた2台のエンジンから、正常に使える部品だけを電子回路で繋いで、1台分の推力を出すことに成功したニュース」

なんてものは、全くマスコミで取り上げられていませんね。(*)

 

予め、あらゆる事態を想定して、電子回路でエンジン間をつないでいたらしいのですが、それでも考えてみてください。

月よりも遙かに遠い位置にある探査機を、遠隔操作だけで部品を回路を繋ぎ直して、機能を復帰させてしまうんですよ。

 

これ、SF作家でも思いつかないようなすごい技術なんですけど、世間の人達は全く興味がないのでしょうか。

 

まあ、それはよしとして。

 

ここ最近で、流星群が話題にあがるようになったのは、もう一つ要因があるかもしれません。

それが、ダスト・トレイル理論です。

 

1999年、ヨーロッパにおけるしし座流星群において、流星雨の出現を「予言」し、見事に的中させた天文学者がいました。

その後、2001年には、日本におけるしし座流星群で、またもや大出現を的中させました。

この時に有名になったのが、ダストトレイル理論です。

 

ダストトレイルとは、彗星が通過したときに残る、塵(ちり)の帯のことです。

 

彗星は、主に氷の塊でできています。

(最近確認できました)

これが太陽に近づくと、「太陽風」に吹かれて表面の氷が溶け出して、あたりに粒子をまき散らしながら軌道を通過していきます。

この粒子は、その後もその軌道を回り続けるため、ここに地球の軌道が重なったときには、きっと大量の流星が見られるはずだ、という理論です。

 

この理論が発表された当時は、ダストトレイルというもの自体が存在するかさえわからないものでしたが、2002年には撮影によって、その存在が確認されています。

 

先に書いた2001年のしし座流星群とは、あの大流星雨のことです。

 

この頃はまだ、ダストトレイル理論が半信半疑だったので、天文年鑑には極大時のHR(1時間あたりの流星観測数)が、確か20個程度の数字だった気がします。

それでも流星群としては多めなのですが。

ですが、

「理論が正しければ、HR1000を超す可能性がある」

と書いてあって、それを知ったマスコミも騒ぐし、結果としてはすばらしいものを見ることができて感激しました。

 

私が見た夜半過ぎでもHR2~3000くらいは観測できましたし、明け方あたりではHR5000までいったらしいです。

高校の頃のハレー彗星は、日程と天候が合わなくて、ろくな観測ができませんでしたので、ようやくそのリベンジを果たしたような気がしたものです。

 

実は、つい先日も、このダストトレイルを通過する際の流星群が来るよーという話があったのですが、日本では時間的に、あまりよく見られなかったようです。

 

しかし今年の流星群といえば、まだ12月14日にふたご座α流星群があります。

「ふたご座α」というのは、ふたご座の中で最も明るい星(=α星・アルファせい)であるカストルのことです。

これは、この流星の輻射点(ふくしゃてん)の位置を示しています。

 

 

流星群は、だいたいどちらの方向から飛んでくるかがわかっています。

その中心点のことを、輻射点(又は放射点)と呼びます。

 

今年のこの流星群は、HR50が予測されています。

これは、毎年お盆にやってくるペルセウス座流星群に匹敵する数です。

しかもこの日は新月に近いので、ほぼ一晩中、好条件で見られるはずです。

あとは、天気次第ですけどね。

 

流星群の前に付いている名前は、全てこの輻射点のある星座のことです。

先に挙げたしし座流星群はしし座の方から来ますし、ペルセウス座流星群は、ペルセウス座の方向から飛んできます。

 

ところが実際には、輻射点から少し外れた位置を見ている方が、よく見ることができます。

もちろん、数を多く見られるのは輻射点近辺ですが、輻射点に近ければ近いほど、飛んでくる角度が自分に向かうようになりますから、尾が短くなってしまうのです。

むしろ、少しずれた位置を見る方が、尾の長い流星を見ることができます。

こんな感じ↓で。

 

また、全天を見たときに、普通は天頂付近が一番暗くなっています。

従って、我々シロートが肉眼で流星観測をするときには、天頂付近を探すのが一番いい、と思われます。

 

星図盤を一枚、塾に置いておきます。

よろしければ、天気のいい夜にでもお使い下さい。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義

 

 

*追記2018.04

これを書いた当時、「はやぶさ」は本当にマイナーな存在でしたが、その後日本中に注目されたのはご存じの通りです。