【雑記帳(あすなろ)】

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あすなろ217 うどんそば

2020年2月7日投稿

 
 
 
2019.11号
 
先月、健康診断に行ってきました。
 
その中で、腹囲を測定したのですが、測定したオネーサンが記録を書こうとして、
「すみませんもう1回測っていいですか」
と再測定。
そして記録を書きながら、
「朝倉さん、お腹、どうかしました?」
と。
 
なんだそりゃと思って聞くと、一年前の腹囲は72センチだったのが、今回70.5センチに下がったのが気になったみたいです。
 
いやそんなの誤差の範囲だろと思うのですが、わざわざ測り直したということは、この歳で腹囲が減る人は珍しいってことなのかもしれません。
 
というわけで、私はまた一つ、風説のウソを暴いてしまったのでした。
何かというと、
「糖質制限ダイエット」
とやらです。
 
私は、炭水化物の割合が相当高い食生活をしています。
ここでの炭水化物とは、米・パン・うどん・モチあたりがメインです。
 
その代わり、脂の摂取は押さえています。
 
脂肪ってのは、エネルギーの銀行預金なんですよね。
現金=炭水化物がなくなれば確かに銀行=脂肪からお金をおろしますけど、それ以上にガンガン振り込みしてたら意味が無いでしょ。
脂を減らしたかったら、脂の補充をしなければいいのです。
 
以前にもどこかで書いたような気もしますが、あのダイエット法は
「やせたいけど肉を食いたいのはガマンできない」
という西洋人がひねり出した屁理屈で、
「アイスは食ってもカロリーにならない」
と同レベルのものだと思っています。
 
確かに、炭水化物の少ない食生活に慣れるまで、一時的には減るらしいのですが、それ以上に食っちゃえばむしろ増えます。
 
ついでに言うと、西洋人以外の人間には一般に
「脂を取り過ぎると体調がおかしくなる装置」
がついているのですが、歴史的に肉と脂ばっかり食ってきた西洋人は、その装置が遺伝的についていません。
その遺伝子を持った血統は、みんな死んでしまったのでしょう。
 
つまり、西洋人と同じように脂ばっかり食っていたら、東洋人は簡単に死にます。なむ。
逆に、西洋人はどんだけ脂を食っても死なないので、我々から見たら、人としてありえないような太り方をすることができるのです。
 
そんなわけで炭水化物大好きな私ですので、白米大好きです。
うどん大好きです。
モチ大好きです。
パン……は、手軽だから食べるか、程度かなあ。
 
その中でも、うどんは子育てでも本当にお世話になっています。
おかげさまで、少なくとも幼稚園の頃までは、ウチの子は全員がうどん大好きでしたよ。
 
うどんといえば、そばとどちらが好きかという話がよく出ます。
うどん派かそば派かというようなネタは、犬派か猫派か、とか、ドラゴンボールかワンピースか、とか、お好み焼きかもんじゃ焼きか、きのこかたけのこか(*)、など色々とありますよね。


*初めて聞く方は、「きのこたけのこ戦争」で検索してみてください


我が家はうどんばっかり食わせていたせいか、どちらかを選ばせると、ほぼうどんでした。
私もうどん派です。
 
でも関東って、そば屋の方が目立ちますよね。
見ている限り、個人営業はそば屋、チェーンはうどん屋ってパターンが多い気がします。
もちろん、個人のうどん屋もあるんですけどね。
 
うどんといえば讃岐うどんが有名でして、今や県をあげてキャンペーンをやっています。
ですから、うどんが西、そばが東というイメージがあるかもしれませんが、実はそういうことでもないようです。
 
うどんは、小麦粉を水で練って作ります。
 
ここから始まる製法では、うどん以外にもお好み焼きやたこ焼きなど、実に色々とありますが、日本には、奈良時代の遣唐使が持ち帰った「こんとん」という団子菓子が最初と考えられています。
ただし、小麦そのものは弥生時代からあったようです。
 
その後、製麺技術は伝わったのか見つけたのかはわかりませんが、記録上にうどんが最初に登場するのは室町時代となるようです。
しかし、当時はまだ臼が搗き臼(つきうす)しか無かったために、小麦を粉にするのに手間がかかって、小麦粉製品は高級品でした。
 


搗き臼
餅つきに使うのがこれ


 
しかしその後、江戸時代になると挽き臼(ひきうす)が普及したために、うどんも庶民が口にする食品となったのでした。
 


挽き臼
粉をひく石臼はこちら


 
対するそばですが、こちらも各地の弥生時代の遺跡からはその花粉が発見されていまして、小麦よりも少し前の時代から普及していたようです。
しかし、こちらも当初は麺類ではなくて、そば粉をねってゆでた「そばがき」だったようです。
なお、そばがきの別名として「かいもち」という名前があるのですが、これは高校生以上なら知っている「児の空寝(ちごのそらね)」に登場する「かいもちひ」の正体です。
 


そばがき(かいもち)


 
そばがきについては平安時代、道長の甥が、山の住人から出された「蕎麦料理」を指して、「食膳にも据えかねる料理」と歌に歌ったという話があります。
当時の蕎麦は、貴族は食べないような粗食という位置づけだったようです。
 
先述の「かいもちひ」については、現代語訳によっては「ぼたもち」とされているものも見受けますが、この道長の甥の逸話からすれば、修行僧の食事ですので、ぼたもちではなくてそばがきの方が正解であると思われます。
 
さて、蕎麦もやはり、ソバの実を粉にして作ります。
すると小麦粉と同様に、臼の問題が生じてきます。
やっぱり粉にする手間は結構かかるわけです。
 


ソバの花と実


 
しかしソバは、水の少ない土地でも栽培できるために、非常食としては作られていました。
当時の分類としては、雑穀扱いだったようです。
 
それが、うどんのように麺として生産されるようになると、そこからは急に広まったようです。
つまり順序としては、うどんが先のようですね。
麺に加工しやすいように小麦機を混ぜるようになったのも、やはりうどんという先例があったからでしょう。
 
落語で、「うどんや」という話があります。
夜中、江戸の町を鍋焼きうどんの行商が売り歩く様子を描いた話です。
この通り、江戸の町ではうどんが普通に売られていたようですので、
「江戸といえば、うどんよりそば」
というわけでもなさそうです。
 
また、先述の通り、うどんの生産および消費で日本一なのは香川県なのですが、生産量二位は、実は埼玉県らしいのです。
埼玉もそれなりに伝統的にうどんを生産していたようですから、うどん=関西というわけでもないということが、ここからもわかります。
 
そういえば、「稲庭うどん」は秋田ですから、それを考えると全然関西じゃないですね。
一方でそばも、「にしんそば」は京都名物とされています。
 


にしんそば
そういえば食べたことないや


 
一つ忘れていました。うどんそばといえば、「たぬき」の呼称の違いがありましたね。
 
関東では「たぬき」といえば普通、天かすが入っているうどんやそばのことを指すと思います。
また、「きつね」は言わずと知れた油揚げ入りですよね。
 
しかし関西では、
「きつね」=「油揚の入ったうどん」
で、
「たぬき」=「油揚の入ったそば」
のこととなります。
 
最近はチェーン店やコンビニの影響で、関西独自の呼び方が廃(すた)れ始めているなんて話を聞いたこともあるのですが、どうなんでしょうか。
この程度の文化の違いは、いつまでも残ってほしいものです。
 
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義