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あすなろ162 西之島(過去記事)

2018年5月31日投稿

 

 

 

2015.04号

 

小笠原諸島の西之島はご存じでしょうか。

こうしている今も、溶岩を流し続けて領土拡張している真っ最中の島です。

 

最初は、西之島のすぐ南の海上(島から500メートルくらい)で噴火が始まって、新しい島が出現しました。

これが2013年の11月のことです。

 

その後、噴火が続くにつれて溶岩は広がり、西之島本体と一つになります。

その後もさらに噴火は続き、今では元の島を覆い尽くしています。

 

次の図は、成長していく西之島の様子です。

左から順に、2013年12月、2014年3月、2015年3月です。

 

 

左上の本島に対して、右下の新島が徐々に大きくなって、本島を飲み込んでいく様子がわかると思います。

 

そして2005年3月の調査では、今回の噴火活動では初めて、拡大が停止したという発表がありました。

しかし、溶岩の噴出が止まったわけではありませんので、まだ面積は広がっていく可能性もあります。

 

実はこの島は、1970年代から、島の面積を増減させてきました。

 

1970年代までの西之島は、南北に細長い島(次図左上)でした。

しかし1973年、その南方海上に火山が出現して、広がった溶岩はもとの島とつながります。

今回の噴火と同じような流れですね。

 

このときの噴火は、およそ1年くらいで収束しました。

噴火終了直後が、次図の右下です。

最終的には、こんなU字型の島となりました。

 


西之島の成長

左上から下へ順に右下まで


 

ところが、これ以降は波による激しい浸食を受けて、島はどんどん削られていきます。

その一方で、U字型の「湾」には土砂が打ち寄せられて、徐々に陸地化していきます。

そうやって堆積と浸食を続けた結果、1990年頃には、ほぼ四角い形状の島へと変わっていました。

湾の最深部は、もはや池です。

 


島の最南端は浸食されながら、湾が堆積で埋まり始める


湾は完全に埋まって池となる
この後さらに、最北端は丸く削られる


 

その後も浸食を受けて年々減少中のところへ、今回の噴火です。

1年余りの噴火の結果、島の面積は一気に10倍にまで広がりました。

今後も面積は増加を続けるのか、それともまた以前のように減少に転ずるのか、まだまだわかりません。

 

現在、普通に存在している島々も、最初はこうやって広がったり削られたりしながら現在の形になっていったと思うと、なかなか感慨深いものがあります。

 

とはいえ、この島がそのまま拡大を続けて四国のようになるかといえば、そう簡単にはいかないでしょう。

 

今回の噴火で急激に島が拡大できたのは、島の周辺が最初から浅瀬だったからです。

海底地形図を見ればわかりますが、島が元の10倍になったなった、なんて言っても、それは所詮、海底火山体の山頂に収まっているレベルなのです。

 


西之島周辺海底の立体図
右上拡大図の濃い部分が今回の新島
北側にはまだ広がる余地があるが、南方向はすでに限界であることがわかる


 

もちろん、この海底火山を覆うような大規模噴火が起これば、巨大な島に成長することは可能です。

しかしそうなると、今度は西之島の東にある父島で、噴煙などによる大規模災害が起こる可能性もあります。

 

そうでなくても、現時点ですでに溶岩が津波を起こす可能性まで出てきました。

 

右図の通り、南側は海底火山体の山頂火口縁まで迫っています。

このまま上に溶岩が積み重なると、ある時島の一部が崩壊して、海底の斜面を駆け下りることがあります。

これは、陸上で言うところの火砕流に相当するのですが、その規模次第では重力波が発生して、津波が発生することもあるのです。

 

西之島の場合、父島に達する津波は1メートル程度と計算されています。

と書くと小規模なのですが、巨大な島を願うなら、それに応じたリスクは高まる、ということですね。

 

ともあれ、ハワイのキラウエア火山のように、少しずつでもずっと溶岩を出し続けていけば、徐々に大きい島に成長することでしょう。

もしかしたら、四国レベルにまで大きくなるかもしれませんね。

夢は広がります。

 

ま、とりあえず、あと1万年くらい待ちましょうよ。

うわー楽しみですねー。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義