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あすなろ95 血液型人間学?(過去記事)

2018年4月4日投稿

 

 

 

2009.09号

 

 

以前からこれを読んでいる方は十分ご承知だと思いますが、私は「科学の人」です。

科学的に正しいと証明されていないことは信用しません。

定期的に現れては消えるエセ科学~マイナスイオンだの、アミノ酸ダイエットだの、トルマリンだの~のブームは、私にとっては嘲笑(ちょうしょう)の対象でしかありませんでした。

わかっていたならともかく、本気で騙(だま)されて無駄なお金を使ってしまった人は、本当にご苦労様です。

 

さて、これらと同様に、もう何十年も前から、学術的に全く意味がないと否定されているのに、未だにすごい数の人が騙されているものがあります。

それが「血液型人間学」というものです。

 

バブル真っ盛りの80年代後半、この血液型の一大ブームが起こったことがありました。

そんな中の1986年、富山大学の学生が、卒業論文のテーマにこれを取り上げたことがあります。

こんな感じです。

 


血液型と関連があると思われる性格について、60項目の質問を作成しました。

それに対して、「はい」と「いいえ」で答えさせる調査を136人に対して行いました。

この「人間学」が正しいのなら、例えばO型の人の性格に合う質問なら、O型の人に「はい」が明確に多く、それ以外の人には「いいえ」が明確に多いはずです。

その違いが、測定誤差なのか有意な差(=意味のある差)かを見極めるために、統計学的に検定しました。


 

その結果、60個の質問の中で、有意な差が見られた回答は、たった3個だけでした。

しかもその3つは、

 

・血液型人間学によればO型に「はい」が多くなるはずの質問にAB型の「はい」が明らかに多くなってしまった項目

・B型が多くなるはずがAB型が多い項目

・B型が多くなるはずがO型が多い項目

 

の3つだったそうです。

つまり、60個も用意した「血液型別特徴」は、何一つ正しいものはないと、統計学的に否定されてしまったのでした。

 

別の調査もあります。

 

80年代に血液型ブームを巻き起こして大儲けをした能見正比古が亡き後、今は息子の能見俊賢が後を継いで布教活動に努めています。

その息子の著作では、各血液型の中にも4つのタイプがあるということになっているので、それに対応させた調査も行われました。

つまり、今回は血液型4種×4タイプの、16個の質問を用意して、自分に合うかどうかでまた「はい」と「いいえ」を聞いたわけです。

この調査では、大学生337名を対象に行われました。

 

結果、有意な差が現れたのは一項目のみでした。

そしてその項目も、AB型の性格のはずがO型となり、やはり「何一つ正しくない」という結果に終わりました。

 

もっと大規模な調査結果もあります。

 

TBS系全国28社テレビ局が、サンプルを無作為抽出して行っている意識調査に、血液型と関連があると言われる性格の質問項目を入れて、80年、82年、86年、88年の4回にわたり、総計12418名の調査を実施しています。

その結果を統計学的に検定したところ、全24項目の中で、毎回有意な差が出たとされる質問は1つだけでした。

しかしそれも、毎年同じ血液型に支持されたわけではありませんでした。

これはB型が多くなるはずの質問だったのですが、80年ではB型、82年はO型、86年ではB型、88年ではAB型に、多く支持されています。

 

結果に一貫性がないので、やはり血液型と性格との関連性は証明できていません。

 

血液型は、20世紀の始めに発見されました。

その新しい可能性に対して、日本の医師達が性格との関係を探ろうと模索する中、論文として最初に著(あらわ)されたのが1927年のことでした。

しかしその根拠は、各職業や行動に対して、21名の調査、12名の調査、18名の調査、など、実におそまつなものでした。

 

この学説は、1933年の日本法医学会総会にて、正式に否定されます。

 

その後、バブルの頃に流行した「血液型人間学」は、能見正比古がこれを掘り起こして、脚色しただけのものです。

現在のものも、基本的には昔のこれと変わっていません。

 

いいですか?

 

こんなものは、今から70年も前に、すでに「それはねえよ」という結論が出ているんです。

戦前の話ですよ。

 

ただ、一応フォローをいれますと、この手の本は確かに、うま~く騙せるような書き方をしてあります。

これは、占いでもよく使われる「テクニック」なのですが、どんな人が聞いても「自分に合っている」と思わせるようなことを言えばいいのです。

 

例えば、今日の占いをしてあげましょうか。

 


今日は、人間関係に注意。

自分勝手な行動を取ると、まわりとトラブルになるから注意してね。


 

……自分勝手な行動をとると、まわりとトラブルになるのは当たり前です。

よくある「今日の占い」なんてものの正体は、だいたいこんなレベルです。

 

では、こんな文章はどうでしょう?

 


・あなたは人に好かれ、尊敬されたいという強い欲求があります。

 

・自分の将来には希望を持っていますが、願望の中には非現実的なものもあります。

しかし、まだ使われていない潜在能力がたくさんあります。

 

・社会の秩序やルールを尊重し、それを守るために自制することができます。

しかし、制限や禁止事項が多いと、面白くないと感じます。

 

・内面の性格には弱いところもあり、時には自分の行動が正しかったのか、不安に陥ることもあります。

しかし、一般的にはそれを克服する能力はあります。

 

・放浪癖はありませんが、一度は行ってみたいと思っている場所が複数あります。


 

当たっているでしょ?

だって誰だって当たるように書きましたからね。

 

そしてこの冒頭を、「◆型の人は~」と書き換えて、内容を4つくらいに適当に振り分ければ、血液型人間学の完成です。

読む人は信じ切っていますから、自分に多少合わなかったときにも、自分なりに勝手に修正してくれるので便利なものです。

 

今では、外れたときの逃げ道も用意されています。

「性格チェック」から自分の「血液型度」を出したとき、実際の血液型と合えば「キミは素直」、合わなければ「自分を意外に知らないのかも」だそうですよ。

そんなどうにでもなるような書き方を読んだら、普通はそれでも信じる人なんてい……るんだろうなあ、やっぱり。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義

 

参考文献:『「心理テスト」はウソでした。』村上宣寛