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あすなろ168 きのこ(過去記事)

2019年3月4日投稿

 
 
 
2015.10号
 

以前書いたことがありますが、私は文を書く際に、動植物名を科学として書く場合は片仮名で、文化や生活として書く場合は平仮名もしくは漢字で書いています。

例えば、
 

「庭に近所の猫が入ってきた」

「ネコの仲間は爪を格納できるが、チーターだけは格納できない」
 

などなど。
 

他にも、片仮名を平仮名を意図的に使い分けている言葉はあります。

例えば、我が家という意味の「うち」は「ウチ」としていますし、自動車という意味の「くるま」は「クルマ」としています。
 

なんでかって言われても、たいした理由ではないのですが、
 

「漢字では本来の意味から外れるが、さりとて平仮名表記すると文に紛れて読みにくいから」
 

といったところでしょうか。
 

どうでもいいことですのでダラダラ書くのはヤメにしますが、←この文のように漢字が少ない文は、「ダラダラ」「ヤメ」を片仮名表記することで、メリハリが効いて読みやすくなります。

片仮名、便利ですね。
 

さて、そんな風に片仮名を使い分けている私ですが、最近、片仮名と平仮名で別のものをイメージしてしまう単語を発見しました。
 


えのき

エノキ


 

皆様は、この二つを読んで、何を連想しますか?
 

私の場合、前者はエノキダケというキノコ、後者はエノキという樹木を連想します。

自分でも無意識に、先に書いた「平仮名は文化生活ジャンル」という俺ルールが適用されていたなんて、本当にびっくりです。
 

木なんて連想しない?

まあそういう人の方が多いでしょうね。
 

でも下妻の人なら、エノキはオオムラサキの幼虫の食樹(エサ)だということを知っていてもいいと思います。
 


オオムラサキ(シモンちゃん)

日本の国蝶とされています。


 

キノコといえば、他にもマツタケ、シイタケ、エノキダケなどがありますが、この名前はそれぞれマツ、シイ、エノキの木と関係あります。

マツタケはマツに生えますし、シイタケはシイに生えます。そしてエノキダケはエノキに生えます。
 

ところが上記三種のうち、シイタケとエノキダケは倒木から生えるのですが、マツタケは生きた木からしか生えません。

ですから、シイタケとエノキダケは、栽培用の原木さえあれば狭い場所でも量産が容易に可能となるのですが、マツタケは生きた松、つまり松林が無いと「生産」できません。
 

マツタケの価格が高いのは、そういった理由です。
 

しかし終戦直後の頃までは、マツタケといえば比較的安いキノコでした。
 

マツタケが良く生えるためには、アカマツの木の根元付近がきれいに掃除されている必要があります。

そして当時は、松葉や松の枝を燃料などとして利用していたために、マツタケの生えやすい環境が常に整っていたのです。

アカマツの木自体も、旧街道沿いには松並木として残っていたり、未開発の松林が各地にあったりして、ありふれたものでした。
 

しかし近年、松林が切り開かれたり、松並木が病害虫によって枯らされたりした結果、マツタケが希少なものとなっていったわけです。
 

一方で、シイタケは昔からずっと、日本で最も愛されてきたキノコと言えるでしょう。

現在でも、日本で最も出荷額が高いキノコとなっています。
 

なお、和食で出汁といえば、鰹節、昆布、干し椎茸の三つが代表で、はるか昔から精進料理に欠かせない食材でした。
 

ところが、現在のように原木に菌を植え込む栽培法が確立したのは、昭和になってからの話です。

それまでは、ほとんどが天然物でした。
 

江戸時代には、原木を用意して天然の菌が付くのを待つ、という栽培方法もあったようで、藩の事業としても行われていたようです。
 

エノキダケは、出荷額はシイタケに負けるものの、現在は出荷量が最大のキノコです。

なのですが、こちらをご覧ください。
 



 

はい、エノキダケです。
 

……マジっすか。
 

実は、天然のエノキダケは、こんな立派なキノコだったのです。
 

では、あの売っている白い細いのはなあに?というと、アレはエノキダケの「モヤシ」なのです。

どうやら、暗いところで育てると、ああいう色形になるんだそうです。
 

いやあ、びっくりですね。
 

食用のきのこといえば、他にもマイタケ、エリンギ、ナメコ、シメジなどがあります。

中でもシメジは、
 

「昔、『味しめじ』という名前で売っていたのは、実はヒラタケ」
 

「その後、『ホンシメジ』という名前で売っていたのは、実はブナシメジ」
 

「名前の由来はかつては『湿地』からだと国語学者が書いていたのを『そうじゃない、占地だ』と主張したのは、かの牧野富太郎」
 

「『香りマツタケ味シメジ』というのは、かつては高価なシメジが買えなくて安価なマツタケで我慢した庶民の負け惜しみか」
 

……など、面白い逸話の多いキノコなのですが、今回は割愛します。
 

そんなわけでスーパーに並ぶきのこ達ですが、きのこって、野菜……ですよね……。
 

野菜の定義を求めて、辞書を7つほど引いてみました。

そのうち5つには、「食用とするために畑などで育てる植物」などとなっていまして、残り2つは「植物」という言葉の代わりに「草本」という言葉が使われています。
 

植物かあ……。
 

またこの問題に来ちゃったなあ。
 

分類学上は、キノコは植物とは言い切れないんですよねえ。
 

それならば、お役所に聞いてみることにしましょう。

日本政府さまこんにちは。
 

総務省の「日本標準商品分類」を見てみました。

こちらでは、きのこは穀類・肥料用作物・野菜・花木・樹木のいずれにも入ってなくて、別項目として扱われていました。

やっぱりアレは、野菜とは別扱いなんですね。
 

一方、農林水産省の統計情報でも、野菜の中にきのこの名はありません。

どこなのか探しまくった結果、「特用林産物」という項目が。
 

開いてみると、しいたけ、なめこ、たけのこ、くり、わさび、ぜんまい、木炭……。
 

きのこ栽培は、林業でした。

林業!
 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義