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あすなろ223 カルデラ(2)

2020年8月17日投稿

 
 
 
2020.06号
 
前回の続きです。
カルデラのお話です。
 
小中学校の理社のレベルでは、カルデラと言えば阿蘇で、その規模は世界有数だなんて書いてあると思います。
多分。
 
確かに、以前はそういう認識だったらしいのですが、今では日本一ですらないようです。
とはいっても、「カルデラ作りでギネスにチャレンジ」という町おこしイベントがあったわけではありません。
研究が進んだ結果、あれもカルデラここもカルデラ、ということがわかってきたのです。
 
……というよりも、私の見る限りでは、「カルデラ」という定義が、昔とは変わっただけなのではないかという気がするんですよね。
 
カルデラというのは火山の噴出によって山体がへこんだもの、であります。
でも、噴火口だってそういうものですよね。
富士山の頂上に火口があるのも、赤城山や榛名山の山頂に湖があるのも、山頂付近が噴火で吹っ飛んで、穴になった結果です。
 
で、いつものウィキペディアに質問してみました。
 


――本来は単に地形的な凹みを指す言葉で明瞭な定義はなく、比較的大きな火山火口や火山地域の盆地状の地形一般を指す場合がある。


 
ああ、明確な定義はないんですね。
ってことは、火口でもカルデラと呼べばカルデラなんですね。
 
さらには、「元カルデラ」もカルデラ呼ばわりしちゃってもいいんだそうです。
 


――過去にカルデラが形成されたものの、現在は侵食や埋没によって地表に明瞭凹地として地形をとどめていない場合もカルデラと呼ぶ。


 
また、研究者のサイトに、
「普通は2kmより大きいものを指す」
「でも小さいのもそう呼ばれることも」
なんて書いてあるのも見ましたので、学術的な定義は定まっていないながらも、一応の目安はあるみたいですね。
 
そんな状態ですので、日本国内のカルデラも、昔よりに比べてかなりの数に増殖してしまったようです。
同じくウィキペディアによると、日本には、北方領土も含めると164個のカルデラがあるんだそうです。
北方領土の分を入れなくても157個あるらしいです。
(数え間違えてたらすんません)
 
……やっぱこれ、私の知らない間に全国で「カルデラを作ろう」という町おこしイベントがあったんじゃないんですか?
 
ちなみに、富士山の火口は直径780mとのことで、脇に空いている宝永火口と言われる穴も、直径1.2kmくらいのようです。
ですから、先ほどの「直径2km以上」という定義によれば、こちらはカルデラには入れないようですね。
 


宝永火口

 
上空から


 
一方で、先に挙げた赤城山や榛名山は共に、頂上がカルデラとされているようです。
大きさは、赤城山頂が4km×2kmで、榛名山が2km×3kmということですので、富士山よりもずっと大きいんですね。
 
まあ確かに、山の上は湖を囲んで駐車場とか売店とかいっぱいあるしなあ、なんて思いながら画像を探したところ、考えていた以上にでっかい山でした。
ありゃそうでしたっけ。
 


上:赤城山
下:榛名山


 
じゃあ、山の中にある湖って、みんなカルデラってこと?
……と思ってみたのですが、どうもそういうわけでもなさそうです。
 
ただ、カルデラじゃなくても、火山活動と関係の深い湖は各地にあるようです。
 
例えば、火山の噴出物で川がせき止められたためにできたとか。
天然のダム湖みたいなものですね。
日光の中禅寺湖は、そうやってできたらしいです。
こういうのは「堰止湖」と言うらしいのですが、読み方不明です。
「せきどめこ」?
「せきしこ」?
 
また、福島の猪苗代湖は、元々は断層の窪みに水が溜まってできたのですが、火山で出口が塞がったために水位が上がったことがあるとのことです。
 


川と湖も面白いなあ。
今度なんか書くかもしれません。


 
カルデラの話に戻ります。
 
箱根は、カルデラらしいですよ。
 
びっくりです。
 
ただ箱根の芦ノ湖は、川が火山でせき止められてできたものだそうです。
ですから、カルデラの中にありながら、カルデラ湖ではなくて「堰止湖」に分類されるのだそうです。
 


円内が箱根
確かにこうやって見ると、カルデラです。
山地が円形に連なっています。

 
箱根の地形図
複数のカルデラが複合して作られた


 
箱根のカルデラは、南北11km×東西8kmあるんだそうです。
でけー。
 
……と思ったのですが、阿蘇のカルデラは25×18kmなんだそうで。
箱根の倍以上でした。
 
九州には、他にも巨大カルデラがいくつもあります。
鹿児島なんてこんな状態です。
 


赤い枠内がカルデラ
一番下が鬼界カルデラ→前回記事参照


 
そして九州最大のカルデラは、実は阿蘇ではありません。
こちらが、宮崎県と大分県にまたがり直径25×45kmの、
大崩山(おおくえやま)コールドロンです!
 



 
あれ?
カルデラどこー?
 
調べてみましたところ、コールドロンってのは
「元はカルデラだったけど、今は削れてなくなっちゃったよ」
というものらしいです。
そういえば、前の方に
「元カルデラもカルデラ扱い」
なんてことを書きましたね。
 
てなわけで、阿蘇は日本一じゃなくなってしまいました。
それでは日本一は、というと、それは北海道にありました。
しかも、皆さん絶対に、地図で見たことのある場所です。
 




 
屈斜路湖(くっしゃろこ)です。
 
なあんと、あの北海道にある「目玉」は、カルデラだったのです。
 
屈斜路湖は、正真正銘のカルデラ湖です。
元々は、もっと丸い形をしていたものが、右下に火山が噴火したために、現在の形になったとか。
それでも、カルデラ湖としては日本最大になるんだそうです。
 
屈斜路カルデラは、26km ×20kmのサイズを誇り、日本最大で……
あれ?
 
さっきさあ。大崩山コールドロンって25×45kmって言ってなかった?
これ、屈斜路より明らかにでっかいよね。
それとも、コールドロンはカルデラとしないってこと?
でも、大崩山コールドロンの所には「九州最大のカルデラ」って書いてあるんだよねー。
 
ま、いっか~。
 
はい。
では。
次。
世界一のカルデラです。
 
世界一のカルデラは、インドネシアのトバ湖周辺に拡がるトバカルデラ(またはトバ湖カルデラ)だとされています。
大きさは……。
 
あのですね。
どこを探しても「トバ湖の大きさ」ばっかりで、「カルデラのサイズ」が見つかりません。
仕方がありませんので、カルデラのサイズ=トバ湖のサイズということにします。
ともかく、サイズは100×30kmだそうです。
湖としては琵琶湖の倍だとか。
 



 
このカルデラは、一度に形成されたわけでは無くて、3回に及ぶ噴火の複合型のようです。
そしてその最後、74000年前の噴火は、超巨大噴火というレベルのものでした。
 


緑の点線が、3つのカルデラを示す
一番新しいのは中央部のYTT


 
トバ火山の大噴火はあまりに大量の噴煙を噴き上げたために、それが空を覆って太陽の光が届きにくくなった結果、「火山の冬」が起こりました。
人類は、噴火による気候変動によって1万弱~1万数千人くらいにまで急減したようです。
 
それでは「人類」は、噴火前はどのくらいの個体数がいたかというと……
これがまた、資料によってバラバラなんですよね。
 
当時は数百万人いたという資料に合わせれば、この噴火は人類の99%以上を死滅させたことになりますし、別の資料では、60%が死んだともあります。
ただ、どちらも学術論文ではないので、あんまり信用していません。
 
実は当時は、ヒトという動物には数種類あったのです。
現在はホモ・サピエンスの1種類だけですが、この頃はまだ、ホモ・なんたらってのが、まだ色々といたんですよ。
 
で、その全種類数を合わせて「人類」としているのか、それともホモ・サピエンスのみを「人類」としているのかで、個体数が変わってくるんじゃないのかなーと推測しています。
ただなんせ、一次資料が見つからないので、それ以上は不明ということでして。
 
ともかく、ホモ・サピエンスが1万程度にまで減少したことだけは、現生人類の遺伝子解析からも事実のようです。
また、少なくとも2種類のヒトが、この時に滅びています。
 
そしてこの頃、ヒトに寄生するシラミが、アタマジラミ(毛髪に寄生する)とコロモジラミ(衣服に寄生する)に分化しました。
つまり、「衣服」が生まれたのがこの頃だったというわけです。
 
なお、トバ火山最後の噴火は、過去十万年で最大規模のものでした。
心配しなくてもこんなのは、そうそう起こらないと思いますよ。
 
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義