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あすなろ229 七福神-2

2021年2月2日投稿

 
 
 
2020.12号
 
七福神のお話、続きです。
 
前回は、その始まりとなった三体……じゃなくて三柱である
恵比寿(えびす)・大黒(だいこく)・毘沙門(びしゃもん)の話でした。
ですから今回は、それ以外の四柱です。
 
有名どころで言ったら、次点は布袋(ほてい)か弁天(べんてん)あたりでしょうか。
 
どっちが先でもいいのですが、前々回にちょっと触れた、弁天様の話から始めることにします。
 
今、弁天様と「様」をつけましたが、七福神の中で一番「様」が様になっているのが
この弁天だと思っています。
 
「さん」でしたら恵比寿さん(えべっさん)あたりは耳にしますが、
恵比寿様とか大黒天様とか……
まあ、あることはありますが、人口に膾炙しているとは言いがたいと思います。


「人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)」とは、
「世間の人々の話題・評判となって広く知れ渡る(北原学長の明鏡より)」
という意味です。
この言葉の面白いところは、この言葉自体が、人口に膾炙していない点です。
お前、人のこと言ってる場合じゃないだろと、いつも思うのですが。
 
……って、どっかで書きましたっけ?


それはともかく、弁天様で様が付きやすい理由は至極単純です。
美しい女性の神とされているからです。
例え神様でも、オッサンやジジイには様を付けるつもりは無くて、
でもきれいな女の人には思わず様を付けちゃうという、
要はそれだけの話です。
 
ところで、ここまで弁天弁天と書いていますが、
正式には「弁財天」です。
前々回に取り上げた、仏のランクである「天」に所属しています。
大黒天や毘沙門天と同じですね。
 
そして、こちらが元々の仏像たる「弁財天」です。
前々回にも出した画像です。
 



 
正面には剣を持っています。
他にも色々と持っています。
もう普通に仏像ですね。
 
この弁財天は、元ネタはヒンドゥー教のサラスバディ
……とずっと思っていたのですが、正解はサラス バ テ ィ だそうです。
 

うーわまじか。
ってことはパールバティもか。
 
二十代の頃からずっと間違えていたぞ俺。

 
 
 
まあ。
それはともかく。
 
上の画像のような弁財天は、武神という面を持つらしいのですが、
同時に学問や音楽の神でもあるみたいです。
それが、いわゆる弁天様の、琵琶を持った姿です。
そして弁天の元となったサラスバティも、
やはり芸術・学問の地を司る神だとのことです。
 



 
弁天(歌麿画)


 
弁天画を見ていると、その姿のモチーフはどうも、天女のようですね。
 
また、サラスバティが河に関する神だった影響で、
弁天もやはり河川や海に関わる場所に祀られてることが多いようです。
確かに、弁天島とか弁天池とか聞きますし、
弁天堂が湖畔に建っていたりもします。
 
七福神に戻ります。
 
弁天の次は、知られている順番からすれば、布袋(ほてい)になると思います。
 



 
今度は、仏教の「天」ではありません。
実在の僧侶です。
唐の時代です。
 
本来の名は契此(かいし)だということですが、
常に袋を背負っていたので通称が布袋となったのだそうです。
そしてその姿が描かれてた禅画が、日本にもそのまま伝わってきて、
そのまま定着しました。
その姿から、福の神として受け入れられたようです。
 
なお、現在のチャイナにも、布袋信仰は残っているようですね。
こんな巨大な布袋をのっけた寺が、どっかにあるらしいです。
 



 
そして残る2人は、福禄寿と寿老人です。
 
これがまたですね、どっちがどっちか、昔はいつまで経っても
覚えられなかったんですよ。
 
それもそのはずで、元は2人とも「南極老人星」の化身で、
要するに同じ人のことだったのです。
それがどういうわけか、別々に伝わったものが、
日本では福禄寿と寿老人になったらしいのです。
 
この2人は、名前からわかるかもしれませんが、
共に不老長寿の象徴です。
 
なお、「南極老人星」とはりゅうこつ座のカノープスのことで、
南中したときだけ、南の水平線のちょい上に見える星です。
カノープスは、全天でシリウスの次に明るい恒星ですので、
水平線近くの高度でも、そこそこちゃんと見えます。
とにかく、極めて高度の低い星です。
 
もっと南の地域では、もうちょっと普通に見えるらしいのですが、
多分茨城では海の水平線近くを見ないと、まともに見られないと思います。
また、りゅうこつ座は冬の星座で、オリオンやおおいぬと同じ頃に南中します。
なかなか見られないので、見えると感動しますよ。
 
それはともかく、こちらが福禄寿です。
 



 
そしてこちらが寿老人。
 



 
頭が長いのが福禄寿です。
そうじゃないのが寿老人の方。
 
福禄寿の長い頭は、やっぱり昔から面白かったようで、
江戸時代の浮世絵では散々いじられています。

 


はしごをかけて、福禄寿の頭を剃る大黒天の図。


 
江戸時代の浮世絵師、歌川国芳(うたがわくによし)が描いた、
「福禄寿 あたまのたはむれ」という、一連の作品群もあります。
後ほどご紹介します。
 
一方、寿老人といえば、強いて言えば鹿を連れているくらいで、
それ以外はこれといって特徴もない格好をしています。
残念ながら、一番薄いキャラです。
 
寿老人以外でもそういえば、七福神はそれぞれ、
使いとなる動物を連れています。
 

・恵比寿:鯛
・大黒天:鼠(ねずみ)
・毘沙門天:百足(むかで)
・弁財天:蛇
・布袋
・福禄寿:鶴
・寿老人:鹿

 
布袋だけ何もいませんが、この人は実在の人物だから仕方ない、
ということらしいです。
 
てなわけで、七福神については、だいたいこんな感じです。
日本人ならば、全員の名前は覚えておきましょう。
 
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義
 
 
 
はいおまけ。
歌川国芳作「福禄寿 あたまのたはむれ」
 






 
この作者、歌川国芳は、こんな浮世絵↓でも有名な人です。