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2022.04号
今回は簡単に。
小6の授業中に、野菜と果物の区別の話が出ました。
イチゴやメロンは、果物ではなくて野菜だ、
というような話(クイズ?)が、テレビであったそうです。
しかしこれには、本当は正解がありません。
確かに、野菜とも言えます。
本来の果物とは「木の実」であって、
イチゴは「草」ですし、ダイコンやキュウリも「草」ですから。
しかし、だからと言って、ドヤ顔で
「イチゴは果物じゃなくて野菜だよ。お前バカじゃねえの?」
と言い切るのは間違いです。
と、授業中はそんな話で終わりにしたのですが、
その根拠でも出しておきます。
ではまず、
日本一、野菜や果物に詳しいサイトって、どこでしょうか。
はい。
簡単ですね。
農林水産省です。
では、そこからの引用をしてみましょう。
果樹とは
農林水産省では、園芸作物の生産振興を効果的に推進するため、
概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、
果実を食用とするものを「果樹」として取り扱っています。
従って、
一般的にはくだものとは呼ばれていないと思われる
栗や梅などを果樹としている一方で、
くだものと呼ばれることのある
メロンやイチゴ、スイカ(いずれも一年生草本植物)などは
野菜として取り扱っています。
これを読む限り、農林水産省では、
確かにメロンやイチゴを野菜扱いしています。
しかしその代わり、ウメやクリを果物としています。
ウメはともかく、クリもフルーツだそうです。
それで満足なら、別にいいんですけど。
その話は、こちらにも記載されています。
いちごは野菜なの? 果物なの?
園芸学では、
木の実(木本性)は果物(果樹)、
草の実(草本性)は野菜と分類します。
草本性であるいちごは野菜。
また、農林水産省の作物の統計調査でも野菜に含まれています。
ただし、実際は果物と同じように食べられていることから
「果実的野菜」とも呼ばれています。
果実的野菜、だそうです。
ということは、やはり野菜の一種としていますね。
ところが、同じ農水省のサイトで、
こんなページもあります。
令和元年度 食料・農林水産業・農山漁村に関する意向調査
野菜やくだものの外観や販売方法に関する意向調査
(中略)
注:2
「くだもの」とは、
みかん、りんご等の小売店等で販売されているくだものをいい、
メロン、いちご等の果実的野菜を含む。
この調査では、「くだもの」の中に、
「果実的野菜」を含めていますね。
果実的野菜を野菜として分類するのは、
あくまで農水省の、調査上の区分である、
ということがわかります。
もう一つ、別の例を出しましょう。
GAP認証取得農産物の年間出荷状況について
(平成30年調査結果)
GLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAP認証取得経営体等に
聞き取り調査を行ったところ、
認証取得農産物の年間出荷量は少なくとも、
穀類が約2万トン、野菜類が約14万トン、果実類が約1万トンとなりました。
調査の概要
1.調査対象品目
穀類:
米、麦、大豆
野菜類:
(根菜類)かぶ、ごぼう、さつまいも、
じゃがいも、だいこん、にんじん、
やまのいも(葉茎菜類)キャベツ、こまつな、
たまねぎ、はくさい、ブロッコリー、ほうれんそう、
ねぎ、レタス(果菜類)かぼちゃ、きゅうり、
スイートコーン、トマト、なす、ピーマン
果実類(果実的野菜を含む。):
いちご、かき、すいか、なし、ぶどう、
みかん、かんきつ、メロン、もも、りんご
GAPとは「農業生産工程管理」のことですが、
GLOBALという文字が見えるとおり、
農水省では現在、「国際水準GAP」というものを推進しています。
つまり、国際水準に合わせた結果、
「果実的野菜」は「果実類」に分類されているわけでして、
世界的にはイチゴやメロンは果物である、
ということになります。
そして、こんなのもあります。
日本産果実マーク使用許諾要領
農林水産省が商標権を有する
「日本産果実マーク(以下「マーク」という。)」
に関する使用許諾について、次のとおり定める。
1.目的
日本産の果実及び果実的野菜(以下「日本産果実」と総称する。)の
品質やおいしさ等を
海外の流通業者、消費者、外国人観光客等にアピールするとともに、
海外において日本産果実が他国産果実と容易に識別されることを
目的として定められたマークの適正使用のため、この使用基準を定める。
このあたりをまとめますと、
「ジャパニーズフルーツ」の中には、
イチゴやメロンが含まれていますね。
以上からの結論。
世界基準、及び世間一般では、イチゴは果物である。
ただし農水省は、植物学的な分類に従って、野菜として統計をとっている。
なんでこんな、
「植物学的な分類」をしているかというと、
そうしないと、境目が曖昧になってしまうからです。
例えば、マクワウリとか。
マクワウリは、ウリという名前はついていますが、
実際はメロンです。
果物として食べます。
そういう曖昧なものが、
この先また新しく出て来ないとも限りません。
そのためには、野菜と果物を区分するための、
はっきりとした定義が必要なんですね。
ですから、イチゴを野菜とするのは、
あくまで
「農水省では」
「植物学では」
ということにしたほうがよさそうです。
言語と科学は、時にこういうぶつかり合いが起こりますが、
そういうものですので仕方ありません。
……それでもまだ何か言うような奴がいたら、
こう聞いてみてください。
「イモって何?」
さあて。
イモって、何でしょうか。
→ヒント
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義