2018年3月
あすなろ141 ウイルスは生物か(過去記事)
2013.07号
生物を学びたくて大学へ行った者です。
私に限らないと思うのですが、自分の得意分野に関して、世間様で聞く内容につっこみを入れたくなることがあります。
先日もNHKのラジオで「ウイルス菌が云々」と言っているのを聞いて、「ウイルスは菌じゃねえよ」と一人でつぶやきながら運転する私なのですが、同じようなことってありますよね?
菌といえば、20年近く前、当時流行した二十四時間風呂のセールスマンが、「バクテリアという菌が~」という説明を始めたときのことも忘れられません。
菌を英語で言うとバクテリアだよ……と言いかけてやめたあの頃は、何にでも悪態をつく今よりも若かったんだなあ、と感じています。
とは書きましたが、普通の人にとっては、菌=バクテリアとウイルスの違いなんて、はっきりいってどうでもいいことだと思います。
カットソーやチュニックの定義なんて知らなくても、買って着ることに対して何も困らないのと同じでしょう。
ですが敢えて言います。バクテリアとウイルスは、色々なものが根本的に違います。
なんせ、ウイルスはそもそも、生物とは認められていないのです。
ではウイルスは、生きていないのかというと、生きていると言っていいのかどうかが、少し微妙な存在なのです。
ある意味、生きていると考えることもできますので、「生き物」と呼んでも差し支えないのかもしれません。
しかし、生物学的な分類では、「生物とは言えない」ということになっています。
生きていても生物とは言えない例は、ほかにもあります。
例えば、人間の細胞。
一つ一つは、確かに生きています。
皮膚を切り落として放置しても、しばらくは個々の細胞が生きていますし、そのうちに死にます。
しかし生きているとはいえ、切り落とした皮膚の一部を一つの「生物」とは呼べません。
生き物イコール生物、というわけではないのです。
これは、「虫」と「昆虫」の違いのようなものだと考えてください。
この二つの言葉は、普段は同じような意味で使っていますが、厳密には違います。
虫という言葉には、特に定義はありません。
「小さい動物」というくらいのものです。
しかし、昆虫には「節足動物門昆虫綱に分類される生物」という定義があります。
これと同様に、生き物という言葉には特に定義がありません。
しかし、生物という言葉に対しては、定義を設けようとする人たちもいます。
生物の定義にはまだ諸説あるのですが、地球上の生物に限っては、
1. 自己増殖する
2. 代謝する
3. 恒常性の維持
4. 細胞から構成される
あたりを挙げるのが一般的なようです。
各項目について説明します。
1. の自己増殖とは、
「自己の体を分離させることで自己と同じ姿の生物を作り出す」
というような定義となっています。
2. の代謝とは、
「エネルギー源を内部に取り入れて、それを分解することでエネルギーを作り出すこと=異化」
と
「エネルギーを使って有機物を作り出すこと=同化」
の総称です。
簡単に言うと、「食べること」と「育つこと」ができるか、ということです。
3. の恒常性とは、
「変化に対して内部を保とうとすること」
です。
人間ならば、血圧や体温の調整、病原菌の排除などです。
4. の細胞には、
「リン脂質による二重膜に包まれている」
「細胞質で満たされている」
などの決まった特徴があります。
この特徴は、地球上の全ての生物に共通となっています。
さて、先に挙げたバクテリアは、この四つの条件を全て満たしますので、余裕で生物と言えます。
しかしウイルスは、知る限りこの4つの条件を満たしてはません。
まず 4. から。
ウイルスはDNAなどの遺伝子と、それを覆っている蛋白質のカラしかありませんので、細胞とは言えません。
また、ウイルスにはエネルギーを作り出す能力がないので、 2. と 3. が無理なはずです。
が、もしかしたら私の勉強不足だったり、科学的に未解明だったりするかもしれませんので、この2つは保留とさせてください。
最後に、 1. に関して。
ウイルスは増えますが、増え方が生物の常識から外れています。
ウイルスの増殖法
上の図は「ヒトに寄生するウイルス」ですので、それに合わせて説明します。
ウイルスは、ヒトの細胞内部に侵入するとまず、自分のカラを開くなどして、中の遺伝子をヒトの細胞内に放出します。
すると、その遺伝子を読み取ったヒトの細胞は、その情報を「上からの指令」と勘違いして、ウイルスのカラと遺伝子を作る作業を始めてしまいます。
そうやって量産されたウイルスが細胞の外に放出されることで増殖するのです。
つまり、ウイルスはウソ情報を流しているだけで、量産作業しているのはヒト細胞ですし、ウイルスの材料もヒト細胞のものです。
しかも、最初に着ていたカラはさっさと捨てちゃっていますので、侵入してから第1号が完成するまでの間、ウイルスは一時的に細胞内から消滅しているように見えます。
こんなのはやっぱり、生物とは言えないと思います。
私からすれば、ウイルスの増殖は生命活動ではなくて、単なる化学変化です。
しかし、ウイルスを破壊、もしくは無効化することを「殺す」と表現することもあります。
「ウイルスを滅菌・殺菌」というような言葉は、実際に薬とか医療関係では使われているみたいですので。
殺すことができるなら、やっぱりウイルスも「生き物」ということになってしまいます。
え?「殺菌」ですって?
ああ……
また菌という言葉が出てきてしまいました……
最初に書いたとおり、生物学的には、ウイルスは菌でないのです。
しかし……
こうなったら、広義の「菌」にはウイルスも含まれる、と解釈することにします。
前言撤回ですわ。
だってそうしないと、いくら殺「菌」しても、ウイルスには全く関係ないことになってしまいます。
ぼくの所だけウイルスが「死」んでない、というのは嫌ですからね。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義
あすなろ82 虫博士2008夏(過去記事)
2008.08号
さて、今年も夏休みのいい季節がやってまいりました。
それに先だって、先日は子供が通う幼稚園に、虫に関するウンチクを垂れに行って参りました。
一時間近く話していたのですが、最後まで飽きた様子もなかったので、どうやら成功だったようです。
それはいいのですが、翌朝から、幼稚園バスが来てドアが開くと、乗っている園児がみんなして「むしはかせ~」と手を振ってくるようになってしまいました。
そこまでされると、次から何か用事があっても、幼稚園に行きにくくなってしまうでありますよ。
うむむ。
ともあれ、そんな原稿をせっかく作ったので、こちらでも披露致します。
実際には、100枚近くの画像と10種ほどの鳴き声の音声データを使いました。
また、用語や表現なども、当日はもっとずっと園児向けでした。
* * *
「むし」ってなんでしょう?
象や犬は、違いますよね。
スズメもメダカも違うと思います。
では、トカゲはどうでしょう?
カエルは?
ザリガニ、カニ、カタツムリ、ムカデ、ダンゴムシ、クモ、クワガタ、イモムシ……
どれとどれが虫でしょうか?
(画像を見せながら、トカゲ以下は園児に
「虫と思う人ー」「虫じゃないと思う人ー」
と手を挙げさせてみました。
クワガタ以外は、必ず両者に手が挙がりました)
まず、象や犬は、「どうぶつの仲間」です。
スズメはとりの仲間です。
メダカはさかなの仲間です。
さて、トカゲは、オトナの人達は「小さい動物」と言うことが多いでしょう。
しかし昔は「虫」とされていました。
ですから、虫と言っても虫じゃないと言っても、どちらも正解です。
(トカゲは漢字で「蜥蜴」→虫偏です)
以下、ザリガニも同じです。
虫でも虫じゃなくても正解です。
ザリガニとカニは同じ仲間ですね。
(蟹、蝦も「虫」ですね)
カタツムリは貝の仲間です。
仲間にナメクジがありますが、あれは貝殻の無くなった貝です。
種類によっては、カラが少し残ったナメクジ(コウラナメクジ)もあります。
また、貝とイカやタコは同じ仲間(軟体動物)です。
ムカデは、ゲジなどと共に「足の多い虫」の仲間です。
ダンゴムシは、エビの仲間です。
ヨコエビというエビがいまして、それに近い仲間です。
クモは、サソリと同じ仲間です。
そしてクワガタやイモムシは、昆虫の仲間です。
幼虫では足の多い(蝶の幼虫など)少ない(ハチの幼虫は無足)もありますが、親では足が六本であることが、まあわかりやすい特徴でしょう。
今日は、昆虫の話をします。
まず、カブトムシ、クワガタ、テントウムシ、カミキリ、ホタル、タマムシ、ゲンゴロウ……。
これらは、こうちゅう(甲虫)という、同じ仲間です。
次に、ハエ、カ、ガガンボ、ハナアブ……。
こちらも同じ仲間です。
ハナアブはハチに似ていますが、頭をよく見るとハエと同じ形をしています。
ハチにそっくりな模様でいることで、敵から身を守っています。
モンシロチョウ、アゲハチョウ、シジミチョウは、みんな蝶の仲間です。
また、蛾も蝶と同じ仲間です。
蛾といっても、きれいな羽の蛾もいます。
スズメガという、すばやく飛び回るかっこいい蛾もいます。
ミノムシも、ミノガという蛾の幼虫です。
ただし、雄は成虫になると蛾の形になりますが、雌はミノの中で一生を過ごします。
スズメバチ、ミツバチ、クマバチは、ハチの仲間です。
アリも、ハチの仲間です。
みんなで集まって巣を作るところはミツバチと同じですし、よく見ると体の形はアシナガバチによく似ています。
ハチのように針はありませんが、ハチの毒と同じようにアリも毒のようなものを出します。
大きいアリを捕まえると、酸っぱい匂い(蟻酸・HCOOH)を出します。
ハチの中には、クモを捕まえる種類もあります。
他に、バッタを捕まえる種類もあります。
カメムシは、カメムシの仲間です。
アメンボも、カメムシの仲間です。
アメンボも、捕まえると匂いを出します。
この匂いが飴の匂いだからアメンボと名付けられた、とも言われています。
アメンボは、水に落ちた虫の血(体液)を吸います。
前足は、虫を捕まえるための形をしています。
水に住むカメムシには、タガメという虫もいます。
魚やカエルを捕まえて、血を吸います。
セミは、カメムシに近い仲間です。
カメムシもセミも、木の汁を吸っています。
今の季節に鳴いているのは、ニイニイゼミという種類です。
7月の終わり頃まで鳴いています。
このあと登場するアブラゼミより、澄んだ声で鳴きます。
ヒグラシは、朝と夕方にだけ鳴きます。
鳴き声から、カナカナとも呼ばれています。
8月頃からは、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシが鳴きます。
バッタ、コオロギ、キリギリスは同じ仲間です。
カマドウマも同じ仲間です。
今の季節は、ヒメギスというのが昼間から鳴いています。
もう少し経つと、キリギリスが鳴き始めます。
やはり昼間に鳴きます。
ケラも、同じ仲間です。
モグラのように、地面の下に住んでいます。
コオロギの仲間ですので、地面の下で鳴きます。
その他、トンボの仲間があります。
ゴキブリは、カマキリにとても近い仲間です。
少し前までは同じ仲間とされていました。
ナナフシという虫もいます。
ゴキブリ、カマキリ、ナナフシは、バッタに少し近い仲間です。
アリジゴクは、ウスバカゲロウという虫の幼虫です。
成虫はトンボみたいな形ですが、トンボとは違う仲間です。
* * *
以上、完全に幼児向けに作った流れなのですが、話している途中に何度も、園児の後ろの方から「へえ~」と感心する先生の声が。
これ、お前ら向けじゃないぞ(笑)
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義
あすなろ66 除菌・抗菌(過去記事)
2007.04号
さて。今回は久しぶりに、アヤシイ言葉の検証をしてみようと思います。
最近、「除菌」という言葉をよく聞きます。
なんでもかんでも除菌です。
つい先日も、幼稚園のお母ちゃん友達と話をしていて、何かの話をしているときに
「○○って除菌もできるそうだし」
という話が出ました。
でもそれを聞いたとき、あれっ?と思ったのです。
そういえば、少し前まで流行っていたのは「抗菌」だったはずだよなあ。
そもそも、殺菌という言葉があります。
注射をうつ前に、アルコールの脱脂綿で拭くのは、確か消毒と呼んだはずです。
なんで殺菌とか消毒とかいう言葉を使わずに、わざわざ「除菌」なのでしょうか。
大抵こういう時には、ウラがあります。
そう思って調べてみたら、すぐに出ました。
おほほほほ。
予想通りでしたよ。
ま、とりあえず、一通り解説していきたいと思います。
最初に、一番よく使う言葉「消毒」です。
関連が深い「殺菌」と「滅菌」も一緒に説明します。
殺菌は、言葉通り菌を殺すことです。
ただし、どのくらいのレベルまで殺せば殺菌というか、という定義はありません。
しかし、滅菌は違います。
ここには、厳密なレベルの定義があります。
もとの意味としては、
「対象物に存在するすべての微生物を、有害無害を問わず除去すること」
ということらしいのですが、完全なる除去というのは非常に困難なので、国際的に「生存確率が百万分の一」と定められているようです。
要するに、ほぼ無菌といえる状態のことでしょう。
ですから、滅菌という言葉が使われるのは、ほとんど医学的な場面に限られてきます。
滅菌ガーゼとかね。
で、消毒という言葉なんですが、これは殺菌と滅菌の中間みたいな言葉です。
一応定義とされているのは、
「有害な微生物を、害のない数まで減らすこと」
となっています。
この場合、無害な微生物はいてもかまわないようです。
言葉どおりですね。
ですから、「殺菌消毒」といえば消毒を目的とした殺菌でしょうし、「滅菌消毒」ならば、消毒目的の滅菌となります。
この辺りまでは、だいたい言葉どおりの定義です。
ただし、以上のうちの「殺菌」に関しては、極端な話ちょっとでも菌を殺すことができれば、もう立派な殺菌作用があると言っても、間違いとは言えません。
ということを踏まえると、この先はアヤシイ世界となってくるわけですねえ。
まずは、「抗菌」。
この言葉は、私は以前から定義を知っていました。
この「抗」という字は、何に抗している意味なのかというと、「細菌の繁殖に対して」というのが正解です。
一応ね。
抗菌には、主に銀が用いられます。
銀を表面につけておくことにより、細菌の繁殖を抑えられる、という仕組みのようです。
ただし、その具体的なシステムに関しては、まだ諸説があるようです。
主に二つの説があるのですが、その内容は割愛します。
というのも、書き始めると長くなる上、生物学的な基礎知識が必要な話になるからです。
でも結局は、菌に働きかけて殺す、というシステムであり、繁殖を阻害するという仕組みではないようです。
ですから、なぜこの場合に限っては殺菌と言わずに抗菌と言うのか、というのが今ひとつわからないところです。
アヤシイですねえ。
怪しいんですよ。
もしかしたら、「殺菌」ほどは即効性がないから、なのかもしれません。
実は、銅や金にも同様の効果があります。
しかし、金と銀はほぼ完全に無害であるのに対して、銅は化合物によっては全くの無害とは言えない場合があります。
また、金は溶けにくい物質なので、工業製品として加工しにくいという欠点があります。
金に限っては、銀よりも高価ですしね。
というような理由から、抗菌には銀が使われています。
実は古くから、銀食器に水や食べ物を入れると、腐りにくい効果があることは知られていたようです。
また、排水口や三角コーナーのような、口に入ることがないような場所に限ってなら、「抗菌」として銅が使われることもあります。
ただしここでもまた、言葉のカラクリがあったりするんですねえ。
売り文句としては
「ぬめりの原因となる雑菌の繁殖を抑える」
というのが一般的です。
そして銅は雑菌の繁殖を抑えますし、ぬめりの原因は雑菌の繁殖です。
ここまでは確かです。
しかし、JISの規格によれば、工業製品の「抗菌」の対象には、ぬめり自体は入っていないんだそうです。
つまり、ぬめりがつかないわけではない、という変なことに。
抗菌の話は、もうそのあたりでいいでしょう。
次はいよいよ「除菌」です。
文字通りにとれば、本来の言葉の意味は、「菌を除く」です。
そして実際に、現時点では各メーカーそれぞれの基準にしたがって、自由に「除菌」を名乗っています。
当然、殺菌効果は必要ありません。
フフン。
やっぱりね。
要するに、普通の石鹸でも除菌はできるということです。
もっというと、単なる水洗いでも「除菌」で間違っていません。
除菌という言葉に惑わされた方、ざ~んねんでした。
ただ一応、前述したとおり「各メーカーによる基準」というものはあるようですから、「当社比」までは信じてもいいでしょう。
さて、これではあまりにもアレだということになって、業界では除菌の定義を定めようという方向に向かっています。
この辺りは、さすが日本の企業です。
「洗剤・石けん公正取引協議会」において、
「台所用洗剤と住宅用洗剤の除菌表示に関する公正競争規約の追加・改訂案が正式に承認され、
公正取引委員会に申請、同委員会から承認決定されました」
となっています。
しかし、これが決定したのが昨年(2006年)の9月のことで、しかも2年の猶予期間が設けられています。
というわけですから、あと2年ほど経つまでは、「除菌」の効果はプラシーボ程度と思ってしまってもいいでしょう。
ちなみに、先に挙げた「抗菌」も、同じような経過をたどっています。
すなわち、乱発したあとに統一基準ができ、今では業界内における定義が定まっています。
最近はすっかり抗菌グッズを見なくなりましたが、おそらくこの基準を越えられないものばかりだったのでしょうね。
つまりはそういうことです。
さ、2年後が楽しみです。
どれだけの物が消滅するでしょう。
またその頃には、どんな新語がひねり出されていることでしょうか。
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義
あすなろ180 衣類の名称:レギンス・スパッツ・セーター他(過去記事)
2016.10号
中3生と、英語の話をしていたときのことです。
「一枚の紙はa piece of paperだし、ケーキ一切れはa piece of cake」
「ピースって、平和だと思った」
「それはスペルが違う。
ジグソーパズルなんかでピースって言うよね。
そのピースのこと。
かけら。
部品」
なんてことを話していたら、女性衣服のワンピースが何でワンピースというのかを知らなかったということが判明。
「つながっていてひとつの部品だからワンピース」
というと、なんかびっくりしております。
おや、今まで気付いてなかったんですか。
でも、案外そんなもんかもしれません。
私もつい最近、コインロッカーとかロッカールームのロッカーという言葉は、カギをかけるロック(lock)から来ているということに、初めて気付いたところです。
でも、かばんを置く棚のことをロッカーだと教わったのは何せ幼稚園の頃でしたので、無理もない話です。
というかあの教室の後ろの棚って奴は、フタすら無くて施錠(ロック)とは無縁の形状をしているくせに、よくもいけしゃあしゃあとロッカーなどと名乗れたものです。
話を戻しますと、ワンピースはともかく、ファッション関係の用語に関して言えば、次から次へと新語が登場しています。
新しい言葉の方がなんだかオシャレのような気がするという、しょうもない理由によって。
でも、ズボンがパンツになっても、ジーパンがデニムになっても、チョッキがベストになっても、モノは同じなんですよね。
だからといって、レギンスを股引(ももひき)と呼べ、というわけではありませんが。
今レギンスと言いましたが、少し前まではあれのことはスパッツと呼ばれていました。
厳密には、レギンスとスパッツは使い分けられているらしいのですが、少し前までは確かに全部スパッツでした。
しかしスパッツとは、元々は脚絆(きゃはん)のことです。
ゲートルとも言います。
ズボンの裾をまとめて歩きやすいようにしたり、靴に雨水が入らないようにしたりするためのカバーのことです。
登山用具でスパッツといえば、ブーツ上部に付けるカバーのことで、これがこの言葉の本来の姿です。
雪山などで使います。
私も持っていました。
一方、レギンスの方はといえば、元々は脚絆(きゃはん)のことです。
ゲートルとも言
……やっぱり同じなのでした。
なお諸外国では、レギンスleggingは日本と同じものを指しますが、スパッツspatsは本来の意味のものを指すようです。
さて、衣類の名称といえば、以前から不思議なのが「ジャンパー」です。
あ、ジャンバーでもいいですよ別に。
私もそう呼んでいますから。
英語で書くとjumperです。
スキージャンパーと同じです。
しかし、jumperと画像検索すると、丸首のセーターが大量に引っかかります。
どうやら、諸外国ではこれがjumperと呼ばれているようです。
では、防寒の上着はというと、ジャケットjacketというようです。
だから、革ジャン・Gジャン・スタジャンなどという呼び名は、日本だけということになるわけですね。
ところが、ジャンパースーツjumpersuitと検索すると、今度は少し涼しげな上下つなぎ姿が現れます。
ジャンプスーツjumpsuitの方が確実です。
こちらはどうやら、パラシュートで降下する兵(空挺兵)を指すジャンパーjumperから来ているようです。
空挺兵がつなぎを着ていたので、つなぎ服のことをジャンパーと呼ぶようになったそうです。
ところで、先ほどjumperがセーターなんて話がありましたが、セーターは英語ではsweaterと書きます。
sweatは汗のことですから、sweaterは汗っかきのことです。
これはその名の通り、元々はスポーツ選手が汗をかいて減量する時に着た、というところから来ているようです。
セーターは、かつては寒い海で漁をする際に着用されたのが始まりで、イギリス海峡のガーンジー島とジャージー島が起源とされています。
また、その編み方をジャージー編みと呼び、そうやって編まれた布はジャージー布、その布でできた服はジャージーと呼ばれ……
つまり、ジャージって、セーターのことだったんですね。
でもジャージー編みなんてあったっけ、なんて思ったのですが、これはメリヤス編みのことなのだそうです。
あとですね、TシャツはT字型だからそう呼ぶのですが、ワイシャツはYとは関係ないって知ってました?
あれは、ホワイトの「ワイ」なのです。
だから英語でT-shirtはあっても、Y-shirtはありません。
英語では、単にshirtといえばワイシャツのことです。
シャツという言葉の由来は古ゲルマン語のskurtaz(短く切る)なんだそうですが、では短く切らない服はといえば、それはチュニックtunicのことです。
チュニックですよ。
今やチュニックといえば半端に長い女性用の上衣のことを指しますが、元々は古代ギリシャや古代ローマの服装であるトゥニカtunicaから来ています。
ですからGreek tunicやRoman tunicで画像検索すると、こんなのがいっぱい見られます。
しかし、これでは少々シンプルすぎて、ちょっと奴隷っぽいですよね。
もうちょっとおしゃれに高級感を演出するためにも、この上にトガtogaを着ることにしましょう。
うん。ステキですね。
これからは、チュニックにはトガを合わせて外出するようにしましょう。
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学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義