2018年3月

あすなろ21 あるある→アミノ酸ブーム(過去記事)

あすなろ

 

 

 

2003.07号

 

さて、最近の世間様ではまたアヤシイものが流行っているようです。

それは、

 

「アミノ酸飲料」

 

って、いや、ちょとまてくだーさい。

 

アミノ酸って、ただの蛋白質の構成要素ですがな。

肉食ってりゃ足りまっせ。

今時普通に生活していて、肉不足な人なんてきいたことないでげすよ。

 

と云うわけで、なんでこんなもんが流行っているのか調べてみました。

 

最初の出典は、やっぱり例によってテレビ番組でした。

その中で、「体力アップアミノ酸」「脂肪燃焼アミノ酸」と云うものが紹介されています。

 

その効果を「実験」で比較しています。

 


・アミノ酸を摂ったAさんとBさんは運動後の疲労が少ないが、アミノ酸を摂っていないCさんとDさんは疲労が大きい。

・同様に大量の計算をさせると、AさんとBさんは正解数が高いが、CさんとDさんは正解数が低い。

 

結論→アミノ酸には対疲労効果がある!


 

あ~。

 

あのさあ……。

 

あいかわらずテレビって馬鹿なことやっているんですねえ。

 

個人の元々の体力や計算力のデータは?

正解数はいいけど、正解率は?

まずそれがないとお話になりません。

同一人物の同一条件で、せめて10回は比較しないと全く意味がありません。

 

この番組の公式ウェブサイトでは、くだらない生データを恥ずかしげもなく公表しています。

見ると、最初の「運動」は乳酸量の比較をしているわけですが、

 

Aさん:1.8→7.3

Bさん:2→10.9

Cさん:2→12.9

Dさん:2→15.7

 

これを上昇率で比較してみますと、

 

Aさん:405%

Bさん:545%

Cさん:645%

Dさん:785%

 

棒グラフにすればすぐにわかりますが、BさんとCさんの間に線を引くような結果ではありません。

完全に個人差であると断言できます。

 

次に、単純な足し算を30分続けて、正解数を競ったデータはこうでした。

 

Aさん:1067

Bさん:1134

Cさん:286

Dさん:859

 

Cさんを基準(100)としますと、

 

Aさん:373

Bさん:396

Cさん:100

Dさん:300

 

ここで、100と300を同グループに入れておいて、300と373を別グループに分ける理由は一体何でしょうか。

残念ながら私の理解を遙かに超えていて、全くもって意味不明です。

 

最後にはスポーツ選手やモデルの方のインタビューが掲載され、その効果を歌っています。

確かにアミノ酸摂取による効果があると云うことですが、こういう普段からぎりぎりの栄養摂取を心がけている方々と我々とを比べること自体がお笑いです。

 

普段我々が生活していて、今以上にアミノ酸が必要になることなんてありません。

成人男子が一日に必要とする蛋白質は、たったの70gです。

女性なら60gです。

これに足りていないと思いますか?

 

ではアミノ酸を摂りすぎた場合。

大丈夫、体に害はありません。

でも体は、せっかく摂ったものを無駄にはしません。

脂肪に変えて保管しておくことにしましょうか。

蓄えが増えてよかったよかった。

 

よく通販で見かける「ダイエットアミノ酸」に至っては、飲むだけで寝ている間にどんどんやせるそうです。

もう理解不能。

 

一応メーカー側の弁明もしておきますと。

ある特定のアミノ酸を組み合わせは、運動後の筋疲労の回復を補助する効果が見られると云う研究結果もあるそうです。

うまく使えばダイエットにもつながらない訳ではないと云うことです。

 

ただし、ここからが肝心。

どの飲料のウェブサイトを見ても、うまーくごまかされているような印象を受けるのは私だけですか?

 

たとえば、「燃焼系アミノ式」

 


・いわゆる現代人は、(中略)生活スタイルを気にしているのでございます。

こんな皆様には、燃焼系アミノ酸飲料「アミノ式」!

(中略)いつでもどこでも気軽に補給できてしまいます。(後略)

 

・アミノ式には、「燃焼系」をイメージして選りすぐった5種類の(略)


 

アミノ酸にどのような効能があるのか、なぜ必要なのか、一切触れていません。

だいたい燃焼系を「イメージして」ってあんた……

 

テレビCMでも、

「こんな運動しなくても、燃焼系アミノ式」

という文句、私には

「こんな運動しなくても、まあこれでも飲んで落ち着けや」

と聞こえますが。

「おーいお茶」と同レベルですね。

 

さすがに、世界三大アミノ酸メーカーである味の素(もう一つは協和発酵)では、きっちりと「条件付きではやせる」と説明が入っています。

ただしここには「現代人は不足がち」との記述を見つけられません。

おそらくそういうデータが存在しないのでしょう。

 

最後に、我が家の医師の言葉。

 


普通の人でアミノ酸欠乏なんて聞いたことがない。
よっぽど栄養がとれないような病状の患者さんとかならありえないことではないけど、
もうそういう場合は脱水症状をおこしているとか、そういう状態。


 

……今、そういう状態ですか?

 

というわけで結論。

 

・アミノ酸の補給は必要なし。

・ダイエットには運動せよ。

 

以上。

 

学塾ヴィッセンブルク  朝倉智義

あすなろ33 カエル(過去記事)

あすなろ

 

 

 

2004.07号

 

一応、梅雨だそうです。

 

そう?

ほんと?

 

……雨にちなんで、カエルのお話でもしましょうか。

 

三年前から、庭で稲を育てています。

もちろん商売ではなく、遊びでです。

 

ウチに来る新聞屋さんは、時々オマケとして植物の種を置いていくことがあります。

それがあるとき、「観賞用稲(もちろん食べられます)」と云う種もみでした。

以来、庭に即席の田んぼを作って、育てています。

 

プラ舟ってご存じです?

左官屋さんがコンクリや土を練る時に使う、四角い桶のことです。

今年は、このプラ舟に土と水を入れて田んぼを作りました。

それでも少々作付け面積が不足しましたので、追加で小さいバケツも田んぼにしました。

 

とやっていたら、そのうちの小さいバケツの中に、オタマジャクシが「湧き」ました。

それまでしばらく棲んでいたのがアマガエルだったし、他の鳴き声も聞いていないので、多分このオタマジャクシもアマガエルだと思います。

アマガエルのオタマジャクシは特徴的な顔をしていると聞いていますが、現時点では小さくてよくわかりません。

 

って書くと、また「カエル詳しいんですね」とか云う方がいらっさいますが、そうでもないです。

カエルはどちらかと云えば専門外です。

それでも、この近辺で見られるカエルは、全種類区別できますよん。

ふふん。

しゅごいでしょ。

ふふふん。

 

──でもそれには、ちょっとしたカラクリがあります。

 

日本には、43種類のカエルが生息しています。

こんなのすぐには覚えられません。

ところがそのうち、茨城のこの近辺に棲んでいるカエルは、全部で10種類。

実はたった10種類しかいないんです。

 

鳥や虫に詳しくなろうとすると、膨大な種類の特徴を頭に入れなければいけませんが、カエルはたった10種類。

だから、覚えるのも簡単なんです。

 

そのうち、緑のカエルは2種類のみ。

大型で単色のものがシュレーゲルアオガエルで、小型で目の後ろに黒い帯があるのがアマガエル(ニホンアマガエル)。

シュレーゲルアオガエル

アマガエル

 

簡単でしょ。

 

残り8種類のうち、ヒキガエル(アズマヒキガエル)、いわゆるガマガエルと、ウシガエルは見ればすぐにわかります。

ヒキガエル

ウシガエル

 

なので、残り6種類。

 

ツチガエルも、灰色で体表にイボイボを持つのですぐにわかります。

一度見れば絶対に忘れないのですが、見たことないでしょうか。

ツチガエル

 

というわけで、残り5種類。

 

いわゆるトノサマガエルのような、緑に黒班を持つ色のカエルはトウキョウダルマガエルです。

トウキョウダルマガエル

 

残り4種類。

 

カジカガエルは、渓流にしか生息しません。

また、声がかなり特徴的なのと、どうせ滅多に出会えません。

神経質でなかなか姿を見られないこともあり、見た目を覚えるのは後でいいでしょう。

カジカガエル

これで、残り3種類。

 

残っているのは、赤茶色のカエルです。

そのうち、指先が丸いコブ状になっていて、アゴの下に模様があるのがタゴガエル。

タゴガエル

あと残り2種類。

 

赤茶色で指先がコブになっていないのは、ニホンアカガエルとヤマアカガエルです。

この2種類、背中と脇腹の境目に縫い目のような「スジ」が入っています。

そのラインが、まっすぐなのがニホンアカガエル、目の後ろで外側に曲がっているのがヤマアカガエルです。

ニホンアカガエル

ヤマアカガエル

 

 

はい、以上がこのあたりで見られるカエル、全種類です。

これだけ覚えちゃえば、あなたはカエル博士です。

尊敬されちゃうかも~。

 

とは云っても、この近辺で普通に見られるのは、大抵がアマガエルでしょうね。

あとはせいぜい、見るとしてもウシガエルとトウキョウダルマガエルくらいでしょうか。

他のカエルは、すっかり少なくなりました。

 

例えばアカガエル。

かつては、アマガエルと競合しながら、田んぼにも息していました。

毎年、田植え前の水たまりに産卵するのがアカガエル、田植え後に産卵するのがアマガエルでした。

しかし現在では、このわずかな差が、決定的になってしまったのです。

 

最近の田んぼは、稲がある程度育ってくると、水を抜きます(中干しといいます)。

根に空気を通して、発育をよくするためです。

それ以降、田植えの直前まで水をいれません。

そのため、アカガエルは産卵する場所がなくなってしまったのです。

今ではすっかりアマガエル一色です。

アカガエルもいないってわけではないんですけどね。

 

他にも、数の減ってきている種類が結構あります。

アマガエルならよく見かけるので、カエルが減っていると云っても実感がわかないかもしれません。

しかし考えてみてください。

カエルという生き物は、水と陸地と、両方揃ってないと生きられないのです。

 

淡水があれば陸地があるに決まってる?

でもコンクリートの水路で親になっても、吸盤のあるアマガエル以外、陸地にあがれませんよ。

それどころか、誤って水に落ちたカエルが死ぬこともあります。

カエルなのに溺死です。

変ですよね。

でも日本産のカエルって、水中ではエサを捕れないんですよ。

 

カエルは基本的に、身を守る武器や毒を持ちません。

オタマジャクシも同様です。

そのため、様々な動物の重要なエサとなります。

カエルの多い環境には、捕食者が居着きやすいということなのです。

それが、例えばアマガエル一種類だけになるということは、同時にアマガエルの生活サイクルに合わない動物もいなくなるということなのです。

 

つくば市が、トウキョウダルマガエルを中心とした生息分布調査をしています。

調査結果を見る限り、カジカガエルとタゴガエルは見つかっていません。

もう、いないのかもしれません。

 

これで残り8種類……

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義

あすなろ116 トカゲとイモリ・ヤモリ(過去記事)

あすなろ

 

 

 

2011.06号

 

トカゲを見かける季節になりました。

 

トカゲといえば、この近辺の里で見られるのは、まず「ニホンカナヘビ」です。

つやの無い茶色い種類で、尾が特に長いのが特徴です。

 

……なんて書くと、「それ普通のトカゲ」なんて言われそうですが、今書いた二点は、他種にはない特徴なんです。

これが日本の庭先で一番多く見られる種類なんですが、それでも一応、日本列島にしか棲息しない、日本固有種です。

 

筑波の自宅周辺でも、見かけるトカゲは、やっぱりカナヘビばっかりです。

ですから、この近辺にはカナヘビしかいないのかと思っていましたら、筑波山にはニホントカゲがいました。

 

 

ニホントカゲは、カナヘビ類とは違って、体がつやつやのピカピカです。

このツヤっぷりは、ニシキヘビやアオダイショウのような感じです。

尾はカナヘビほどは長くなくて、子供の頃は尾が青い金属のように光っています。

成体になると色が変わって、全体的に赤茶色のピカピカになります。

あと、カナヘビよりも敏感で、すぐに逃げます。

 

子供の頃、愛知県の実家周辺では、ニホントカゲもカナヘビも同じように普通に見ることができました。

ところが、色々と調べてみると、どうやらそういう地域は、少なくとも現在では少数派のようです。

この差が、時代的なものなのか地域的なものなのかはわかりません。

 

しかし一般に、カナヘビの方が「街に強い」ようです。

 

カナヘビは、三メートル程度の立木になら登ることがあります。

しかしニホントカゲは、垂直な壁には登れません。

ですので、ブロック塀に囲まれた空間ができると、カナヘビは出入り自由ですが、その中のニホントカゲは個体数の関係から絶滅してしまうことがあるようです。

 

さらに、「カナヘビは茂みに逃げ込み、ニホントカゲは石の下に逃げ込む」なんて記述も見つかりました。

確かに、筑波山で見たときも、河原のそばでした。

ということは、ブロック塀の少ない田舎になると、今度は田畑と草むらばっかりになるので、やっぱりカナヘビ向けの環境なのかもしれません。

 

こんな差が、庭先で見かける頻度の差になって現れてきているようです。

私の子供の頃は、大抵の家では、裏口同士がこんにちは状態で、敷地が壁で仕切られているなんて滅多にありませんでしたから、今とはやっぱり違うんでしょうね。

 

ウチの子もやっていましたが、カナヘビを飼うのは簡単です。

プラケースは登れませんから、土を敷いて、水を与えて、日向において、適当にエサの虫を放り込むだけで飼えます。

そういう意味では、一番身近な野生動物ともいえるでしょう。

 

以前(2004/7.NO.33)、この近辺に棲(す)むカエルは多分8種類しかいないだろう、なんて記事を書いたことがありますが、トカゲなんて、この2種類だけです。

身近な動物なのに、案外種類がないものです。

 

トカゲは、爬虫類(正確には爬虫綱)の有鱗目(ゆうりんもく)に分類されます。

 

――そうそう。「はちゅうるい」は、「爬虫類」です。

漢字を知らないおこちゃまが、交ぜ書きで「は虫類」と書くのは仕方ありませんが、「ハチュウ類」などと片仮名に直す行為は、日本語では「愚の骨頂」といいます。

 

お前のことだよ文部科学省!

 

現在、理科の教科書では、爬虫類は「ハチュウ類」、哺乳類は「ホニュウ類」という表記になっていますが、なぜか鳥類は「鳥類」だし、魚類は「魚類」だし、両棲類は「両生類」です。

脊椎動物は「セキツイ動物」ですが、節足動物は「節足動物」です。

きっと、

「今時のガキ共は、画数の多い漢字を書けないバカ揃いだろうから、書かずに済むように片仮名にしておいてやるよガハハ」

という、老人達の優しい心遣いなんでしょうね。

反吐が出るわ。

どうせやるなら、チョウ類とかギョ類とかやってみろよ、と常々思っております。

 

バカと思われないように、漢字は書けるようにしておきましょう。

 

閑話休題。

 

爬虫綱の有鱗目には、他にヤモリ、ヘビの仲間が属しています。

 

このうち、ヘビは6~8種ほど棲んでいるようなのですが、ヤモリは、関東ではニホンヤモリ1種のみです。

 

ヤモリというと、多くの人がイモリとヤモリってどっちがどっち? なんて話になってしまうので、ここで紹介します。

 

 

イモリは両棲類で、水中に棲みます。

 

江戸時代、江戸の町中には川から上水が引き込まれていて、所々で「井戸」として活用されていたのですが、ここによくイモリを住まわせていました。

ボウフラを食べてくれるから、というのと、井戸に毒を入れられてもイモリが赤い腹を向けて死ぬのですぐにわかる、というのがその理由だそうです。

だから、「井守」なのです。

 

対するヤモリは、「家守」です。

人里に棲み、かつては時に住居に入って虫を食べていました。

足が吸盤状(正確には吸盤ではない)になっているので、ガラス程度なら登れます。

塾周辺にも、夜になると時々現れて、明かりに来た虫を食べています。

 

しかしニホンヤモリは、どうやら外来種であり、少なくとも江戸時代初期には、関東に棲んでなかったようです。

今でも、下妻駅前にはいるのに、私の自宅周辺のような、田んぼに囲まれた集落には棲んでいません。

森林にもいません。

人間の住みかにくっついて生息域を広げた動物だということです。

 

ヤモリも簡単に飼えます。

飼い方はトカゲと基本的に同じです。

ただしプラケースの壁を登りますので、蓋は必要です。

 

私も2年ほど飼いました。

かわいいですよ。

 

学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義